(実験)レポートと学術論文との違いは、
① 課題・問題が事前に与えられているかいないか、と
② 一度に大量の書類を採点する人がいるかいないか
です。これらの違いによってそれぞれ書き方が異なるわけです。— 金子弘昌@「Pythonで学ぶ実験計画法入門 ベイズ最適化によるデータ解析」 (@hirokaneko226) July 15, 2017
もう少し詳しく書いておきます。
課題・問題 | 大量に採点する必要 | |
実験レポート | 与えられている | ある |
学術論文 | 与えられていない | ない |
まず実験レポートには、課題・問題がすでに与えられています。課題があって、その課題に対する方針も(程度の差はあれ)決められていて、その方針に基づいて実験をして、結果を書いて、結果をふまえた考察を書く、といった流れですよね。なので実験レポートでは、いきなり課題がある前提で書き始めてよいのです。
しかし学術論文では、課題・問題は事前に与えられていません。課題・問題は、学術論文を書く人が着目したもの (もしくは研究室において指導教員から言われたもの) になります。そこで論文には、課題・問題にいたるまでの背景を論理立てて書く必要があります。この研究分野では過去にこんな研究があったり、あんな研究があったりして、ここまでは分かっているが、またここの部分が解明されてない。。。といった感じです。
ここが実験レポートを書くのと学術論文を書くのとの大きな違いです。そして、学術論文を書くときの難しいところにもなります。自分の研究に関係する論文をいくつも読んで、それらを上手く整理して、学術論文で扱う課題点・問題点まで読み手を導くような文章を書かなければなりません。
一方、実験レポートの特徴として、採点者がいる、ということがあげられます。しかもその採点者は、一度にたくさんの実験レポートを見て採点しなければなりません。なので採点者は、採点しやすいように、学生に書いてもらおうとします。読みやすさよりも採点のしやすさを取るわけです。
たとえば、実験レポートでは、実験結果と考察とを分けて書くことが多いのではないでしょうか。実験結果をすべて書いたあとに、それらに対する考察を書く、ということです。これは実験結果の点数と考察の点数とを整理しやすいためです。しかし学術論文ではそんなことはありません。1つの、もしくは関連するいくつかの実験結果を書いた直後に考察を書きます。この方が結果を見た後にすぐ関連する考察を読めるので、読みやすいですね。
他にも実験レポートにはローカルルールが多いと思います。それぞれの採点者が採点しやすいように、学生に書き方を指示するためです。グローバルスタンダードな書き方である学術論文のほうが、書き方として参考になるといえるでしょう。
そして、実験レポートは基本的に採点者にしか読まれませんが、学術論文は不特定多数の方々に読まれる可能性があります。そのため学術論文は、いろいろな背景の読み手を意識して、なるべく読みやすいように書いたほうがよいです。
以上です。
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