だいたいの日本人は、(もちろんお金をもっていれば) コンビニで気楽におにぎりを買い、食べることができます。これは、日本のコンビニであれば 危ないおにぎりはないし 平均的にどれも美味しいはず、といったコンビニに対する “信用” があるからです。昔、日本のコンビニ第一号店ができたときは、今ほど気楽にはおにぎりを買えなかったと想像します。
今、気楽におにぎりを買えるほどの、コンビニに対する信用があるのは、これまで数々のコンビニが長年に渡って信用を築き上げてきたからです。セブンイレブン・ファミマ・ローソンなどのメジャーなコンビニは、たくさんありますので、利用する機会も多いと思います。そこでよい思いをすればするほど、コンビニに対する信用がアップします。
たとえば、どこかの地方に行ったとき、メジャーなコンビニではなく、はじめて見るコンビニに寄ったときでも、あまり気にすることなくおにぎりを買えるのではないでしょうか。これは、セブンイレブン・ファミマ・ローソンなどに対する信用がアップするとき、コンビニ業界全体における信用も、少しはアップしているためです。言い方は少し乱暴ですが、コンビニならどこも大丈夫だろう、と思えるほどコンビニに対するわたしたちの信用は高くなっています。
コンビニ業界全体で努力して、コンビニに対する消費者の信用を蓄積していった成果なのです。
研究でも同じことがいえます。ある研究分野において、論文が読めたり、研究ができたり、研究成果を論文にできたりするのは、過去の研究成果はもちろんのこと、その研究分野において蓄積された信用があるためです。
たとえば、chemoinformatics (化学情報学) の分野において、礎を築いた一人であり Chemoinformatics: A Textbook の著者としても有名な Gasteiger 先生から聞いたのですが、化学情報学についての最初の論文を論文誌に投稿したとき、3回リジェクトをくらったそうです。つまり、論文誌に出して、拒否されて、別の論文誌に投稿して・・・というのを3回も経験したということです。あの Gasteiger 先生の論文も拒否されるほど、当時 chemoinformatics は認知されていなく、その研究分野の信用も低かったといえます。
それから、Gasteiger 先生をはじめ、多くの研究者の研究成果・貢献により、信用も蓄積されていきました。Chemoinformatics 関係の論文を執筆するとき、そこに ”・・・のデータを使って・・・の解析をして、” と書いても、査読者が違和感なく読めてツッコミをしないのは、PLS で解析しても何も言われずに読んでもらえるのは、信用の蓄積のおかげなのです。
それぞれ、自信の研究分野に置き換えて考えると、同じことが言えるのではないでしょうか。
同じ分野における研究者の研究成果によって、自分がこれから書く論文に対する信用が上がるわけです。このことから、ある研究分野を盛り上げるためにすべきことは、自明かと思います。
過去に蓄積された信用の上に立っている人ほど、信用の上に立っていることは気付きにくいものです。自分の立っている土台としての信用について、ぜひ考えてみましょう。
以上です。
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