研究者が資本(資産)を形成するためのフレームワーク

研究者が研究成果を出し続けるためには、”資本” が必要です。”資産” といってもよいです。資本 (資産) をつくるための考え方 (フレームワーク) についてお話します。

参考にしたのは以下の本です。

 

橘玲, 幸福の「資本」論 あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」, ダイヤモンド社, 2017

幸福の「資本」論
「金融資産」「人的資本」「社会資本」の組み合わせで生まれる8つの人生パターン。あなたが目指すのは?

 

本には、資本形成についての一般的なお話が書かれていまして、それを参考にしながら、ここでは研究者のための資本形成の考え方について説明します。

そもそも資本と資産について、本の中では以下のように説明があります。

 

資本というのは「富を生み出すちから」のことで、資産は「富を生み出す方法」です

 

経済学的に、(金融)資本と(金融)資産とで、お金を異なる側面から説明しています。たとえば、1000 円で本を買ったとします。この経済取引において、財布から資金調達した 1000 円という “資本” を運用して、1000円以上の価値があると考えられる本という “資産” を手にしたわけです。

”資本” や “資産” は、それぞれ金融資本や金融資産だけではありません。本では、金融資本(資産)・人的資本(資産)・社会資本(資産) としています。それぞれの簡単な説明は以下のとおりです。

 

  • 金融資本: 財産
  • 人的資本: 仕事をする力
  • 社会資本: 家族・友人といったコミュニティにおける絆 (つながり)

 

資本・資産について再掲すると、

 

資本というのは「富を生み出すちから」のことで、資産は「富を生み出す方法」です

 

でした。人的資本では、富=自己実現 であり、社会資本では、富=愛情・友情 です。3つの資本、金融資本・人的資本・社会資本から、人によってそれぞれの重要度は異なりますが、富を生み出し、それによって幸福になるというわけです。お金が増えて幸せになったり、仕事を達成して幸せになったり、友情・愛情を感じて幸せになったり、といった感じです。

ただ、3つの資本は独立しているわけではありません。たとえば 1000 円で本を買った例でも、本を読んで知識が増えることで、人的資本が増えます。つまり、資金調達した金融資本としてのお金で、株などに投資して、その金融資産を運用することで利益を得て、さらに金融資産を増やし、それをまた再投資して、さらに金融資産を増やし、、、と同じ考え方を、金融資本・人的資本・社会資本を総括的に考えた “資本” に対して適用します。金融資本・人的資本・社会資本を運用して、そこからの利益の形で、金融資本・人的資本・社会資本を増やす、といったものです。資本という価値を生んでくれる元手をうまく活用して、さらに資本を増やします。

金融資本・人的資本・社会資本のどれも増やしたいところですが、人の時間は有限ですので、自分の時間を、どれを増やすために使うかが大事になります。どれかを重点的に増やしたり、バランスを取ったりする必要が出てくるわけです。どの資本を重点的に増やすかは、人によって分かれるところですし、実際にもいろいろなパターンがありそうです。

逆にいえば、何かに時間を使うとき、金融資本・人的資本・社会資本のどれを増やす時間なのか、意識するとよいと思います。

また、どれも “資本” ですので、(金融資本を考えるとわかりやすいと思いますが) 資本が大きいほうが、それを運用することによるリターン (利益) も大きくなります。(資本の大きさ) × (時間) にリターンが比例するイメージです。たとえば将来的に金融資本を増やしたいとき、若いとき (たとえば20代) は、金融資産を増やすことより、人的資本を増やすことに時間を割くとよいといわれています。金融資本ではなく、人的資本を増やせそうな仕事 (経験をつめそうな仕事) にいろいろとチャレンジして、まずは人的資本を増やして、希少価値のある人材になるわけです。その後、たとえば 30 代で、その大きくなった人的資本を元手に、金融資本も増やせます。

このように、自分の金融資本・人的資本・社会資本と、人生の目標 (何によって幸せを感じるか) によって戦略をたて、自分の人生を設計します。

 

研究者の場合は?

金融資本・人的資本・社会資本の研究者版は下のようになるかと思います。

 

  • 金融資本: 研究費
  • 人的資本: 研究する力 (論文などで成果発表する力なども含む)
  • 社会資本 研究チーム (共同研究なども含む)

 

基本的に、研究者としての目標の一つは、研究成果をあげることだと思いますので、人的資本を大きくして、そこから得られる 富=研究成果 を生み出すことになると思います。ただ、研究費が多くかかる研究もあれば、いろいろな機関とコラボしないと進められない研究もありますので、研究内容によって、金融資本・人的資本・社会資本のどれにどれだけ重きを置くべきかは変わります。

研究者も、何かに時間を使うとき、金融資本・人的資本・社会資本のどれを増やす時間なのか、意識するとよいです。それによって意思決定をし、時間の使い方を設計します。広く研究する中で、いろいろなことに時間を使います。たとえば、

 

  • アイデアを考える
  • 論文・本を読む
  • (実験)計画をたてる
  • 実験する
  • シミュレーションする
  • フィールドワークする
  • 論文を書く
  • 報告書を書く
  • 提案書を書く
  • 教科書を書く
  • 研究発表をする
  • 講演する
  • 講義をする
  • セミナーをする
  • シンポジウムを主催する
  • 研究打合せをする
  • 学会に参加する
  • 学会を運営する
  • 委員を務める

 

などでしょうか。それぞれの時間が、金融資本・人的資本・社会資本のどれを増やす時間なのか、考えるとよいでしょう。

たとえば、金融資本はあまり増えなくても、社会資本が増えると考えて、依頼を引き受けることもあります。

あくまで目標は、研究成果をあげることです。ただそのためには、”資本” を形成することが必要です。研究者が資本を形成するためのフレームワークとしてご参考になれば幸いです。

 

以上です。

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