金子研では、少なくとも金子研から博士前期課程(修士課程)に進学する学生に対して、博士後期課程(博士課程)への進学を心から推奨し、最大限のサポートをしています。実際、現代社会において博士課程に進学するメリットは非常に大きくなっています。
博士課程に向いていない人
もちろん、すべての人が博士課程に向いている、というわけではありません。博士課程に向いていない人は、
将来のビジョン、そして自分が価値を生み出す分野が明確な人
です。このような人は、博士課程には進学せず、その分野の開拓者として脇目も振らず精進しましょう。そうではなく、将来に少しでも迷いのある人は、博士課程を考えるメリットが生じてきます。
博士課程で培われるスキル・能力・技術は今後の人生に「掛け算」で効いてくる
もちろん博士課程では研究をします。研究する過程において、さまざまなスキル (能力・技術) が培われます。


研究分野によって、実験スキルやプログラミングスキルなど異なるスキルもありますが、研究分野に限らず、論文を読むスキル (=複雑な文章を解釈するスキル)、研究課題を設定する能力 (=対象分野の課題を見つける能力)、論文を書く能力 (=構成力、文章力)、英語力などのように、今後汎用的に使えるスキルも培われます。これらは社会に出た後に培われる実務のスキルに対して、「掛け算」で効いてきます。
成果 = (汎用スキル)×(実務スキル)
博士課程で培われるスキルが 1 → 10 倍になれば、単に実務スキルを伸ばしただけの場合と比べて 10 倍も伸びることになります。

博士課程 ≠ 研究者や教員への道
研究に興味があって博士課程に進学するのは大いに結構です。ただ、博士課程の後、必ずしも研究者や大学教員になるわけではありません。多くの人は博士の学位を取得後に就職しています。
たったの3/46=約7%
高い確率で今後の定年は伸びていくでしょう。少なく見積もって 70 歳定年としたとき、修士課程修了後に就職してそのまま働き続けるとすると 46 (70−24) 年間、働くことになります。博士過程の 3 年間は、その中のたった 7% (3/46) です。7% の期間で、上で説明した将来的に「掛け算」で効いてくる汎用的なスキルを身につけられます。
中島敦の山月記のなかに、
人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い
とあります。46 年間という “短い” 間に何かするため、3 年間の博士課程が非常に効果的です。
人生の中における自由度の極大値
中学・高校・大学・修士・博士・社会と人生を歩む中で、博士課程が自由度の (少なくとも) 極大値です。大学時代に自由に使える時間が多いと考えるかもしれませんが、その頃はまだそれほどスキルがありませんので、できることは少なく自由度は低いです。一方、大学・修士とさまざまなスキル・能力・技術を培うことで、博士課程の頃にはできることが多くなり、自由度が高くなります。
修士の頃より、実験やプログラミングも上手くなり、論文を読み書きするスピードも上がり、他に使える時間が増えます。さらに研究を進めるのもよし、新しいチャレンジをするのもよし、これまでの人生を見つめ直すのもよし、自分探しをするのもよし、大いに3年間を活用すると良いと思います。
博士課程に進学しないと損
ここでは詳細な計算は省きますが、さまざまな試算において、修士課程で就職した場合より博士課程に進学して就職した場合の方が、生涯年収が高くなることが確認されています。


さらに最近、博士・博士課程を終了した若手人材を社会で活用する動きが国主導で進んでいます。

また、それに付随して民間でも同じような動きが起きています。

人口減少により博士課程はより重要に
金子研では、自分の希少性を上げよう、レアな人になろう、という話をしています。

これまた高い確率で、少なくとも日本では人口減少が加速します。母集団が小さくなり、より少ない人たちの中で希少性・レア度を上げなくてはなりません。例えば 1000 人の中で 1% の希少性を得るためには少なくとも 10 番以内に入る必要がありますが、これが 500 人になると少なくとも 5 番以内に入らないといけません。
これまで以上のスキル・能力・技術が必要になってきます。社会人として自分のスキルを発揮する前に、スキルを培い、希少性・レア度を上げる期間がより重要視されてきます。
また、今後日本の雇用形態は徐々にメンバーシップ型からジョブ型に変わっていくでしょう。より希少性・レア度を上げていかないとジョブ型として雇用されなくなってしまいます。
給与をもらいながら博士課程
修士課程修了後に就職すれば給与がもらえる一方で、博士課程に進学すると逆に学費がかかるといった心配もあるでしょう。ただ、博士課程でも給与がもらえる制度はあります。有名なものは日本学術振興会の特別研究員DCです。

ちなみに特別研究員に採択されなかったとしても、明治大学には「助手」という制度があり、給与がもらえます。
自分は博士課程でやっていけるか?
いくら博士課程への進学のメリットが分かっても、自分がやっていけるかどうか不安に思う人もいるでしょう。もちろん、博士課程を修了した全ての人が、最初から 100% の自信を持って進学したわけではありません。不安を抱えながらも頑張って博士号を取得してきた先輩たちがいるわけです。
少なくとも指導教員は博士を取得した人ですので、自分が博士課程でやっていけるか指導教員に相談すると良いでしょう。ちなみに最初に書いたように、金子研の修士過程に進学した学生は、問題なく博士課程に進学できると考えています (そうでなければ修士過程の進学の際に対応しています)。
おまけ
自分の名刺に「博士(工学)」、「博士(理学)」など (英語では Ph.D) と付いたり、敬称が Ms. や Mr. から「Dr.」に変わったりして、ちょっとした優越感 (?) に浸れることもあります。
ぜひ、自分自身のために博士課程へ進学しましょう!
以上です。
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