博士後期課程(博士課程)に進むしかない!

金子研では、少なくとも金子研から博士前期課程(修士課程)に進学する学生に対して、博士後期課程(博士課程)への進学を心から推奨し、最大限のサポートをしています。実際、現代社会において博士課程に進学するメリットは非常に大きくなっています。

 

博士課程に向いていない人

もちろん、すべての人が博士課程に向いている、というわけではありません。博士課程に向いていない人は、

 

将来のビジョン、そして自分が価値を生み出す分野が明確な人

 

です。このような人は、博士課程には進学せず、その分野の開拓者として脇目も振らず精進しましょう。そうではなく、将来に少しでも迷いのある人は、博士課程を考えるメリットが生じてきます。

 

博士課程で培われるスキル・能力・技術は今後の人生に「掛け算」で効いてくる

もちろん博士課程では研究をします。研究する過程において、さまざまなスキル (能力・技術) が培われます。

研究スキル・研究能力を構成する15の力
データ化学工学研究室 (金子研) では学生の成長を最優先に考えていることはこちらに書いたとおりです。学生が成長して、研究スキル (能力・技能) が高まります。ただ、研究スキル、研究する能力といっても一つではありません。ここでは、研究力を15...
研究以外でも基礎となる汎用的な力は想像力
創造力も大事ですが、ここでは想像力のほうです。研究スキル・研究能力を構成する力は、こちらに書いたとおり色々ありますが研究に限らず汎用に使える、基本的な力として押さえておきたいのは想像力です。たとえばプレゼンテーションをしたり質問に回答したり...

 

研究分野によって、実験スキルやプログラミングスキルなど異なるスキルもありますが、研究分野に限らず、論文を読むスキル (=複雑な文章を解釈するスキル)、研究課題を設定する能力 (=対象分野の課題を見つける能力)、論文を書く能力 (=構成力、文章力)、英語力などのように、今後汎用的に使えるスキルも培われます。これらは社会に出た後に培われる実務のスキルに対して、「掛け算」で効いてきます。

 

成果 = (汎用スキル)×(実務スキル)

 

博士課程で培われるスキルが 1 → 10 倍になれば、単に実務スキルを伸ばしただけの場合と比べて 10 倍も伸びることになります。

(研究の)成果・成功は『努力』に比例する?いやいや、『正しい努力の二乗』でしょう!
努力しろ、研究しろ、って話ではありません。ちょっとした数式遊び・数値遊びです。研究成果は努力に比例するから時間をかけて努力しましょう、って聞いたことないでしょうか。もっと一般的に、成果・成功は努力に比例する、って話もありますよね。わたしは違...

 

博士課程 ≠ 研究者や教員への道

研究に興味があって博士課程に進学するのは大いに結構です。ただ、博士課程の後、必ずしも研究者や大学教員になるわけではありません。多くの人は博士の学位を取得後に就職しています。

 

たったの3/46=約7%

高い確率で今後の定年は伸びていくでしょう。少なく見積もって 70 歳定年としたとき、修士課程修了後に就職してそのまま働き続けるとすると 46 (70−24) 年間、働くことになります。博士過程の 3 年間は、その中のたった 7% (3/46) です。7% の期間で、上で説明した将来的に「掛け算」で効いてくる汎用的なスキルを身につけられます。

中島敦の山月記のなかに、

人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い

とあります。46 年間という “短い” 間に何かするため、3 年間の博士課程が非常に効果的です。

 

人生の中における自由度の極大値

中学・高校・大学・修士・博士・社会と人生を歩む中で、博士課程が自由度の (少なくとも) 極大値です。大学時代に自由に使える時間が多いと考えるかもしれませんが、その頃はまだそれほどスキルがありませんので、できることは少なく自由度は低いです。一方、大学・修士とさまざまなスキル・能力・技術を培うことで、博士課程の頃にはできることが多くなり、自由度が高くなります。

修士の頃より、実験やプログラミングも上手くなり、論文を読み書きするスピードも上がり、他に使える時間が増えます。さらに研究を進めるのもよし、新しいチャレンジをするのもよし、これまでの人生を見つめ直すのもよし、自分探しをするのもよし、大いに3年間を活用すると良いと思います。

 

博士課程に進学しないと損

ここでは詳細な計算は省きますが、さまざまな試算において、修士課程で就職した場合より博士課程に進学して就職した場合の方が、生涯年収が高くなることが確認されています。

博士の学位はただの飾りか? 〜所得から見た学位取得後のキャリア〜 | Chem-Station (ケムステ)
はじめにこの記事では、化学部分における修士と博士の所得について比較検討し、その結果をもとに博士進学の経済的意義について改めて考えます。経済的リターンを主目的として博士課程後期に進学する人はおそらくほとんどいないでしょう。
博士の年収&生涯賃金は高い?給料事情を学士/修士と比較
博士課程を修了するまでには何年もかかる割に、年収は高くないのではないか。 生涯賃金が低いなら、早く就職した方がいいのではないか…そんな悩みをお持ちの人もいるかもしれません。 博士の年収、給料は高い?低い? 学士、修士と比べて生涯賃金はどうな
博士課程修了者の給料事情【博士と修士どっちが稼げる?】
「博士の給料って実際どうなの?修士より稼げるの?」博士課程への進学に興味がある方は博士の給料事情を知りたいのでは?本記事では国の統計情報と現役企業研究者で博士の筆者の経験に基づいて博士のリアルな給料事情について解説します。博士課程への進学を...

 

さらに最近、博士・博士課程を終了した若手人材を社会で活用する動きが国主導で進んでいます。

「博士人材」活用へ手引書 競争力強化へ環境整備|テレ東BIZ
博士号を持つ専門人材の就職を支援しようと、経済産業省と文部科学省は26日の検討会で企業や大学向けの手引書を取りまとめました。企業に対し、能力に見合った初任給の設定や、昇格や異動といったキャリア形成の道筋の例示などを求めています。博士人材が活...

 

また、それに付随して民間でも同じような動きが起きています。

企業での活躍推進 “博士人材” 創出へ新サービス|テレ東BIZ
人口100万人当たり126人と、日本が欧米や韓国と比べて非常に少ないのが、大学院を卒業するなどして、博士(はくし)号を取得した人の数です。高度な専門知識を持つ「博士(はくし)人材」を増やして、ビジネスの現場で活躍してもらおうと、新たなサービ...

 

人口減少により博士課程はより重要に

金子研では、自分の希少性を上げよう、レアな人になろう、という話をしています。

自分の希少性を上げて時給を上げよう!
いつも学生には希少価値の高い人、レアな人になるといいよ、という話をしています。なお考え方やデータは以下の本を参考にしています。 藤原和博, 藤原和博の必ず食える1%の人になる方法, 東洋経済新報社, 2013 藤原和博, 藤原先生、これから...

 

これまた高い確率で、少なくとも日本では人口減少が加速します。母集団が小さくなり、より少ない人たちの中で希少性・レア度を上げなくてはなりません。例えば 1000 人の中で 1% の希少性を得るためには少なくとも 10 番以内に入る必要がありますが、これが 500 人になると少なくとも 5 番以内に入らないといけません。

これまで以上のスキル・能力・技術が必要になってきます。社会人として自分のスキルを発揮する前に、スキルを培い、希少性・レア度を上げる期間がより重要視されてきます。

また、今後日本の雇用形態は徐々にメンバーシップ型からジョブ型に変わっていくでしょう。より希少性・レア度を上げていかないとジョブ型として雇用されなくなってしまいます。

 

給与をもらいながら博士課程

修士課程修了後に就職すれば給与がもらえる一方で、博士課程に進学すると逆に学費がかかるといった心配もあるでしょう。ただ、博士課程でも給与がもらえる制度はあります。有名なものは日本学術振興会の特別研究員DCです。

募集要項(PD・DC2・DC1)|特別研究員|日本学術振興会
日本学術振興会のページです。

 

ちなみに特別研究員に採択されなかったとしても、明治大学には「助手」という制度があり、給与がもらえます。

 

自分は博士課程でやっていけるか?

いくら博士課程への進学のメリットが分かっても、自分がやっていけるかどうか不安に思う人もいるでしょう。もちろん、博士課程を修了した全ての人が、最初から 100% の自信を持って進学したわけではありません。不安を抱えながらも頑張って博士号を取得してきた先輩たちがいるわけです。

少なくとも指導教員は博士を取得した人ですので、自分が博士課程でやっていけるか指導教員に相談すると良いでしょう。ちなみに最初に書いたように、金子研の修士過程に進学した学生は、問題なく博士課程に進学できると考えています (そうでなければ修士過程の進学の際に対応しています)。

 

おまけ

自分の名刺に「博士(工学)」、「博士(理学)」など (英語では Ph.D) と付いたり、敬称が Ms. や Mr. から「Dr.」に変わったりして、ちょっとした優越感 (?) に浸れることもあります。

 

ぜひ、自分自身のために博士課程へ進学しましょう!

 

以上です。

質問やコメントなどありましたら、X, facebook, メールなどでご連絡いただけるとうれしいです。

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