実験計画法で実験条件を決めることの意義

まだ実験データがないときに、実験条件を設定して実験することを考えます。実験条件を人が決めるときは、化学的な背景や物理的な背景を考慮したり、装置などの条件に基づいたりして、実験条件を決めることになります。このとき、ある程度実験条件を振ります。

データ解析の分野における実験計画法では、なるべく実験条件がばらつくように、すなわち ある二つの実験の間で重複がなるべくないように、実験条件を振って決めます。

実験計画法の概要~データを上手く使って実験のコスパを上げましょう!~
たとえば、化学反応 A + B → C + D の、 C の収率を上げることを考えます。収率がもっとも高くなる実験条件を見つけることが目標です。 実験条件の1つである反応温度を 25℃ にして実験してみましょう。人間は精密機械ではありません...
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この実験計画法を使う意義は、その客観性にあると考えています。

人が実験条件を決めるときは、主観的になります。もちろん、人の知識・知見・経験・感性・勘に基づいて実験条件を決めることは非常に大事です。しかし一方で、それだけを頼りにして何通りもの実験条件を決めると、偏りが出てしまいます。ある一部の原料を優先的に用いる傾向があったり、高い温度もしくは低い温度で実験をする傾向があったり、ある原料を増やすと別の添加剤を同様に増やす傾向があったりすることがあります。そのような傾向があると、実験結果に対する、各実験条件の影響を区別することが難しくなってしまいます。

一方で、実験計画法では、もちろん各実験条件の上限・下限や、必要な制約条件、例えば組成はすべての原料で足して 1 にするなどは満たすようにしますが、それ以外は客観的に実験条件がばらつくように決めます。これにより、すべての実験条件を平等に扱うことができ、例えば実験結果が得られた後に機械学習により、各実験条件の実験結果に対する影響を確認しやすくなります。

先に述べたように、実験条件を決めるときに人の主観、すなわち知識・知見・経験・感性・勘を考慮することはとても大事です。ただそれだけになってしまうと、実験データに偏りが生じてしまうため、うまく実験計画法も一緒に利用することで、客観的な実験データが得られるようにするとよいと思います。さらに機械学習を活用することで、その後の、さらに実験結果を向上させるための検討もしやすくなります。

 

以上です。

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