データ化学工学研究室 (金子研) では、週に1回を目安に、学生たちと私とで進捗報告会を行っています。この進捗報告会は、もちろん学生それぞれの研究の進捗状況を私が把握して今後に向けた議論をすることも目的の一つですが、学生の成長につながるトレーニングをすることも大きな目的であり、むしろそれを指向して進捗報告会の設計をしています。これをふまえて、私の学生への思い・願いをここに示しておきます。
キレイにまとまってなくて構わないのでありのままを発表しよう
“進捗”報告会というと、必ず研究が前に進んでいてそれを報告しないといけない、と誤解するかもしれませんが、まったくそんなことはありません。むしろ、研究が前に進むなんてことは稀であり、実際は (思わぬところで) 寄り道したり、時には後ろに戻ったりしながら、しばらく経って結果的に、研究といわれるようになります。
報告として、学生の皆さんが何を考え、何を実践し、その結果から改めて何を考えたのか、そして今後どのようにするのか、これらの方が重要です。また、何に悩み、何につまずいているのか、そして何を問題意識として抱えているかも、遠慮なく共有して欲しいです。これらの悩みなどは、他の人と議論すればすぐに解決につながることもあるでしょうし、同じようなことを悩んだり考えたりしている人は必ずいるはずで、そのような人にとって参考になるのはもちろんのこと、そのような悩みや問題意識から、次の重要な一手にたどり着くこともあります。
ぜひ、恥ずかしがらずに、ありのままの発表をしてもらえたらと思います。この思いを裏付けるためだけに、厳しく聞こえるかもしれないことをあえて言うならば、報告がないということは (考えることや悩むことすら) 何もしなかった、と認識します。
なお、学生の皆さんが前に進んだとは思っていなかったり、その当時は前に進んでいないと思っていたりすることが、後に振り返ってみたときに重要な転換点だったりすることもあります。今の情報だけでは、研究成果かどうかわからないこともあるのです。
一点、綺麗にまとめなくてよい、とはいえ、必要十分な情報は資料に記載するようにしてください。必要十分の目安としては、その情報から (頑張れば) 他の人も同じ結果を再現できる、です。
積極的に質問しよう
進捗報告会を、質問力を鍛えるトレーニングの場と考えてください。いい質問をするためにはトレーニングが必要ですし、何もしなかったら質問力は向上しません。そして、研究・開発に限らず、組織の中やプロジェクトにおいて、いい質問することが重要なことは多いです。質問力を持つ人材が希少価値とされます。ぜひ、そのような人になれるよう、進捗報告会の場でトレーニングを積んでください。
あくまでトレーニングの場なので、恥ずかしがらずに質問するようにしてください。こちらとしても、変な質問が来るのは想定の範囲内です。
ただ、質問するためには、相手の発表を注意深く聴いているのはもちろんのこと、自分ごととして捉え、問題意識をもったり自分の考えと比べたりすることが重要です。トレーニングということもあり、議論に巻き込むために指名して意見を求めたり、指名して質問を求めたりすることもあります。指名されてから資料を見て意見や質問を考えでは遅いです。発表を聴きながら、準備するようにしてください。
他の人からの質問に適切に答えられるようにトレーニングしよう
質問力と同様に、回答力も鍛えなければ向上しません。相手の質問を明確に理解し、その質問に対して的確に答えられるよう、トレーニングする場と考えてください。学生ごとに、研究内容や研究歴、経験や興味の違いなどで、色々な質問があると思いますが、相手の聞きたい情報を回答できるよう頑張ってみてください。
また、私の質問は、単純に質問です。詰問や叱責ではありませんし、怒っているわけでもありません。邪推しないようにお願いします。例えば、「どうして、サンプル A の予測誤差が大きいの?」 と質問したときは、
✕(誤った解釈) 予測誤差が大きくてダメだ!予測誤差を小さくするまでやり直し!
◯(正しい解釈) 他の予測誤差が小さいサンプルとの違いは何だろう?
となります。聞かれた質問に答えるようにしましょう。
この進捗報告会の場は、金子研にいる1年もしくは3年間しか経験できません。非常に貴重な場であり、(学生の皆さんも学費を払っていますが) 例えば企業の中にはこのような場をお金で買うこと人もいるほどです。ぜひ有効に活用して、皆さんの成長につなげてください。
以上です。
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