分子設計・材料設計・プロセス設計・プロセス管理において、分子記述子・実験条件・合成条件・製造条件・評価条件・プロセス条件・プロセス変数などの特徴量 x と分子・材料の物性・活性・特性や製品の品質などの目的変数 y との間で数理モデル y = f(x) を構築し、構築したモデルに x の値を入力して y の値を予測したり、y が目標値となる x の値を設計したりします。
遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティクス(最適化アルゴリズム)を用いて、x の選択をしたり、分子構造を生成したり、ハイパーパラメータを最適化したり、モデルの逆解析を行ったりします。この際、実行するごとに結果にはばらつきがあり、また必ずしも大域的な最適解が得られるわけではないため、複数回実行します。

例えば x の選択をする際に、遺伝的アルゴリズムを 10 回実行したとして、10 通りの変数選択結果が出てきます。気持ちとしては、10 通りの中で x ごとに何回選択されたかを見て、変数の重要度、つまり選択されればされるほど重要度が高い、としたくなるかと思います。しかし、この選択された回数には意味がありませんので注意しましょう。
それぞれの遺伝的アルゴリズムの結果における x の組み合わせが重要なだけであって、別の実行結果で得られた x の選択結果も、そこでの x の組み合わせこそが大事です。たとえ 10 回中 1 回しか選択されない x でも、その選択結果における他の x との組み合わせで、非常に重要となる可能性があります。その組み合わせで選択されることに意味があり、別の x が選択された場合には、残りの x も変化することで最適となる可能性もあります。また、10 回のなかには、局所最適解に陥ってしまったケースもあるかもしれず、それも含めて 10 回トータルで評価してしまうと、誤った結論になる危険もあります。
x の選択に限らず、他のケースで遺伝的アルゴリズムを使用する際も、複数回実行したとき、一つ一つの結果が大事なのであって、それらの結果をまとめたものには意味がありません。したがって、複数回実行した後に結果を解釈する際は注意しましょう。
以上です。
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