実験と機械学習の融合により、高いフッ化物イオン吸着特性と化学的安定性を併せ持つ層状二重水酸化物の結晶材料を探索しました![信州大学&金子研の共同研究論文]

信州大学と金子研における共同研究の成果の論文が CrystEngComm に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Data-driven exploration of layered double hydroxide crystals exhibiting high fluoride ion adsorption properties and chemical stability

 

です。これは共同研究として信州大学の方々と一緒に研究した成果です。

フッ化物イオン (F) の地下水汚染が世界的な問題となっています。F を除去する吸着剤として、層状二重水酸化物 (Layered Double Hydroxides, LDHs) は F に対して適度な親和性を示しますが、高いフッ化物吸着容量と化学的安定性を両立する LDHs の合成は、実験的に困難な課題です。この課題を解決するため、プロセスインフォマティクスを用いて、高いフッ化物吸着容量と化学的安定性を併せ持つ有望な三元系 LDHs を探索しました。F 吸着試験データに基づいてガウス過程回帰により機械学習モデルを構築し、ベイズ最適化により次の合成条件を探索しました。最初は、LDH 候補の目的変数は F 吸着量のみであり、二価陽イオン(M2+)と三価陽イオン(M3+)の組み合わせを特徴とする LDHs を検討した結果、これまで研究されていなかった Ni-Fe-Ga や Ni-Al-Ga などの三元 LDHs が提案されました。その後、M2+ の溶出量を目的変数として追加することで、Ni-Fe-Y および Ni-Cr-Y のような、高い F 吸着容量と化学的安定性を有する LDH を同定できました。COHO (Crystal Orbital Hamilton Population) 解析の結果、Ni-Al-Ga および Ni-Cr-Y は、Mg 系 LDHs と比較して M2+–O 結合においてより強い共有結合性を示しました。これらの結果は、多様な組成を有する新規な LDHs の合成に向けた方向性となり得ます。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。

 

以上です。

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