ジメチルエーテル製造プロセスをベイズ最適化で頑健に設計すること(ロバストベイズ最適化)に成功しました![金子研論文]

金子研の論文が ACS Omega に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Robust Design of a Dimethyl Ether Production Process Using Process Simulation and Robust Bayesian Optimization

 

です。これは修士卒の中山祐生さんが学部4年生のときに取り組んだ研究の成果であり、対象を頑健にベイズ最適化するロバストベイズ最適化を開発し、ジメチルエーテル製造プロセスを設計した論文です。

(追記) 表紙絵に選出されました!

CO2 をはじめとする温室効果ガスによる地球温暖化の問題は深刻化しつつあり、温室効果ガスの削減が注目されています。削減の取り組みは大きく2つに分けられます。1つ目は再生可能エネルギーの開発・導入であり、2つ目はパワープラントから放出される CO2 の分離回収・活用です。CO2 を資源として活用するための有望な方法の1つとして、メタノール経由したジメチルエーテル (DME) の合成があります。DME は石油、天然ガス、石炭などの化石資源やバイオマスなどの再生可能原料など幅広い原料から生成可能な物質であり、家庭用燃料やディーゼルエンジンの代替燃料としても注目されています。

本研究では、CO2 を原料とした DME 製造プロセスの設計を対象としました。DME 製造プロセスおよび関係するプロセスはパワープラント、CO2 精製プロセス、DME 製造プロセスの3つから構成されます。

パワープラントは、燃料に天然ガスを用いて発電を行います。パワープラントが放出した煙道ガスは CO2 精製プロセスに送られます。パワープラントが放出する煙道ガス中にはCO2 の他に N2 が存在しており、原料として CO2 を利用するためには、煙道ガスからCO2 を分離回収する必要があります。

CO2 精製プロセスでは、Benefield 液を用いて煙道ガスからCO2 の分離回収を行います。精製された CO2 は DME 製造プロセスへと送られます。

DME 製造プロセスでは、メタノールを経由した DME の製造を行います。ここでは原料として外販する 100,000 kW の発電のためにパワープラントが放出する CO2 を用いました。また、DME を合成するプロセスでもコンプレッサーやポンプなどの動力エネルギーを必要とし、それらはパワープラントから供給されます。つまり、パワープラントは発電に要する CO2 排出量に加え、CO2 精製プロセス、DME 製造プロセスで必要となる電力とユーティリティスチームを供給するために、さらなる CO2 を排出することとなります。

本研究は、100,000 kW の電力を出力するために排出される CO2 および、CO2 精製プロセスを含めた CO2 排出量が、原料 CO2 以下となるような DME 製造プロセスを設計します。

プロセスシミュレーションと機械学習を組み合わせて設計変数を最適化する方法として、ベイズ最適化に基づく適応的実験計画法を提案します。この方法は、目的を達成する確率の高い設計変数の候補からプロセスシミュレーションすることで、少ない回数のシミュレーションで設計変数を最適化できます。本研究では、ベイズ最適化における獲得関数の中に、設計条件の候補だけでなくその周辺のシミュレーション結果を考慮することで、頑健な最適化が可能な手法 (ロバストベイズ最適化) を開発しました。実際、平均して約 44 回ですべての目的変数の目標を同時に達成する設計変数の候補を見つけることに成功しました。本手法は、ジメチルエーテル製造プロセスの設計だけでなく、あらゆるプロセスの設計に応用可能です。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上です。

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