金子研の研究成果の論文が ACS Omega に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
です。これは修士二年の落合晴希さんが学部生のときに取り組んだ研究の成果です。
蛍光有機分子は有機発光ダイオードや塗料、蛍光イメージングなどの幅広い分野において用いられており、日常生活において欠かせないものです。一方で、蛍光は特定の分子が示す性質であるため蛍光有機分子の開発は困難です。同じ蛍光有機分子でも溶解させる溶媒を変えることで光学特性が変化することもあります。そのため、新たに蛍光有機分子を設計する上で、溶質と溶媒の相互作用を考慮した光学特性の予測が求められます。機械学習によって構築されたモデルを用いて、既存の構造だけでなく大量の構造をバーチャルで生成し、それらと溶媒を組み合わせて極大吸収波長を予測することで、既知の溶質と溶媒の組み合わせにない新たな蛍光を示す分子のde novo designに期待できます。
そこで、機械学習を活用することで溶質と溶媒の相互作用から得られる極大吸収波長の予測モデルを作成し、短波赤外に極大吸収波長をもつ溶質と溶媒の組み合わせを予測することを目的として研究を進めました。モデルは化学構造から得られた情報を数値化した説明変数 x と、極大吸収波長を y として、回帰モデル y = f(x) を構築します。また、x に溶媒の物性値や溶質、溶媒間の構造類似度を加えることで、極大吸収波長の変化に影響を与える特徴量の探索をしました。
得られた極大吸収予測モデルを使用し、モデル構築に用いたデータセットに含まれていない溶質と溶媒の組み合わせと多様な構造を持つ分子からなる新規データセットにおける極大吸収波長の予測を行い、蛍光イメージングで使用が期待されている極大吸収波長の予測値が1000 nm以上の溶質と溶媒の組み合わせを探索しました。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
質問やコメントなどありましたら、X, facebook, メールなどでご連絡いただけるとうれしいです。