ソフトセンサーの4つの役割

化学プラント・産業プラントで活用されるソフトセンサー (分野によっては Process Analytical Technology (PAT) とかヴァーチャルメトロロジーとか仮想計測技術とか呼ばれたりします) の役割についてです。ソフトセンサーや、プラントにおける時間的な状態変化に対応した適応型ソフトセンサーについては、こちらをご覧ください。

プロセス制御・プロセス管理・ソフトセンサーの概要と研究の方向性 (化学プラントにおけるデータベース利用)
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適応型ソフトセンサーで産業プラントにおけるプロセス状態等の変化に対応する (Adaptive Soft Sensor)
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プログラミング不要で (適応型) ソフトセンサーの検討ができるソフトウェアもあります。

適応型ソフトセンサーを検証できる Python コードを作りましたので、ぜひご自身のデータセットでお試しください
化学プラント・産業プラントにおける測定が難しいプロセス変数の値を、機械学習・人工知能で推定しよう! というのがソフトセンサーですが、プラントでソフトセンサーを用いるときは、基本的に適応型ソフトセンサー (Adaptive Soft Sens...

 

ソフトセンサーの役割の一つは、対象の変数 (目的変数 y) を連続的に推定することです。ソフトセンサーで推定する対象 y は、基本的にサンプリング時間や測定時間が長いものになります。ソフトセンサーがないと、たとえばある上限値を上回らないようにプラントを運転・管理しなければならないとき、y の分析値がわかるまで時間がかかるため、ある程度余裕をもって制御する必要があります。その結果、余計に原料やエネルギーが必要になったり、コストがかかったり、製品をうまく活用できなかったりしてしまいます。

このような状況において、ソフトセンサーにより y の値を連続的に推定することで、管理限界付近での運転ができるようになり、プラントの運転・管理を効率化できます。もちろん、y 推定値を実測値として使用することで、たとえば PID 制御により自動制御することもできます。また、ソフトセンサーの推定値を実測値の代わりに使用することで、y の分析頻度を削減することもでき (たとえば一日三回 → 一日一回)、コスト削減につながります。

二つ目の役割は異常検出です。ソフトセンサーの推定対象である分析計において、分析計の実測値とソフトセンサーの推定値を比較して、その差が大きいときに (推定値が確からしければ) 分析計に何らかの異常が発生していると考えられます。ソフトセンサーは、プラントにおけるプロセス変数の (非線形関係を含む) 相関関係を考慮した、ひとつのプラントモデルです。そのモデルの相関関係からズレたときに、分析計に限らず、プラント全体のどこかで何らかの異常が起きたと検出できます。

三つ目はプラントにおける現象を把握することです。構築されたソフトセンサーのモデルを解釈することで、説明変数 x の間の関係や、x と y の間の関係を考えることができます。もちろん x の間には相関関係があるため、回帰係数で単純に議論することは難しいです。ただ、たとえばランダムフォレスト (Random Forests, RF) による x の重要度や

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Boruta ボルタで選択された x や

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によって、重要な x やその時間遅れを検討できます。

最後に、効率的なプロセス制御です。最初の役割において、x から y を推定した値を実測値の代わりに使用することは、モデルの順解析に対応します。さらにモデルの逆解析をすることで、y の目標値に到達するための、プロセス変数の効率的な操作を提案できるようになります。これにより、ソフトセンサーを推定するものとしてだけでなく、さらなる効率化をするものとして捉え。プラントの運転・管理・制御を効率化できます。

ソフトセンサーを検討するときは、以上の役割を考慮して、いろいろな用途に使用していただければと思います。

 

以上です。

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