人としてやさしさが大切であることはいうまでもないことですが、研究者だからこそ特にやさしさが必要になることがあります。
例えば、研究室の学生にはよく、パワーポイントのスライドを作るときはやさしさが大切、といっています。スライドは何らかの説明をするためのものである以上、すべてのスライドは他人が見るものであり、他人に見せるためにスライドを作成することになります。他人に対するやさしさをもって、他人が見てみやすい、わかりやすいスライドを作成することが大事です。
スライドの文字が小さすぎて見えにくかったり、グラフの軸が書いていなかったり、長文をそのまま載せていたりなど、細かいことを含めて指摘することを挙げればキリがありませんが、すべてひっくるめて、そのようなスライドにはやさしさが足りない、と考えています。見る人が見やすい、わかりやすいように、やさしさをもって作ることを心がければ、適切なスライドを作れるようになると思いますし、そこさえ押さえておけば十分と考えています。他人の立場になって作成されたスライドであれば、必要以上にスライドをキレイにする必要はありません。
スライドを作る技術は、構成や配置や色の使い方・配色などいろいろとあり、ウェブサイトや本などでいくらでも学ぶことはできますが、実際にスライドを作成するときに実践しないと意味がありません。根本的に他人へのやさしさがないと、学んだことを実践できませんし、スライドはキレイそうだけど分かりにくいといった状況になってしまいます。他人へのやさしさをもつことが大切です。
論文を執筆するときの書き方についても同じことです。もちろん論文誌ごとにテンプレートは異なり、細かいルールは異なるかもしれませんが、論文は他人が読むものですので、他人が読んでいて読みやすい、見やすい論文を書く、というやさしさが大切です。他人へのやさしさをもって、構成や書き方を考えれば問題ありません。
他にも多くの場面で、やさしさをもつことが大切です。やさしさをもつためには、いろいろな視点で考えることが大事になります。他人といっても、高校生なのか、大学生なのか、大学教員なのか、企業の研究者なのか、エンジニアなのか、いろいろな視点で考えると、その人にとってやさしいことができるようになります。そして、そのような視点は、経験によって培われます。スライドの例であれば、他人の様々なスライドを見る、すなわち他人の発表を聞く、論文の例であれば、他人の様々な論文を読む、といったことにより、スライドを見る人や論文を読む人の視点を獲得することができます。
人としてやさしさが大切であることはもちろんのこと、研究者だからこそやさしさが鍵になる場面があります。ご参考になれば幸いです。
以上です。
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