金子研の論文が出ましたのでご紹介します。タイトルは
です。この論文はソフトセンサー、特に 「適応型ソフトセンサー」 に関する論文です。
ソフトセンサーが使われるプロセスには、一般的に以下のような特徴があります。
- プロセスの動特性のため、説明変数 (入力変数) X は時間遅れをともなって目的変数 (出力変数) Yに影響する
- X と Y にはノイズが含まれる
- X と Y の関係は時々刻々と変化する
- 複数のプロセス状態がある
それぞれ個別に考慮した手法はありますが、すべてを考慮した手法はありませんでしたので、これらすべてを考慮して予測精度の高いソフトセンサーを開発しよう!、となったわけです。
それぞれの対応の仕方は以下の通りです。
- プロセスの動特性のため、説明変数 (入力変数) X は時間遅れをともなって目的変数 (出力変数) Yに影響する → Gaussian Process Dynamical Models (GPDM)
- X と Y にはノイズが含まれる → Gaussian Process Dynamical Models (GPDM)
- X と Y の関係は時々刻々と変化する → Just-In-Time (JIT) モデリング
- 複数のプロセス状態がある → アンサンブル学習
GPDM というのは主成分分析 (Principal Component Analysis, PCA) のような次元削減を行う手法です。GPDM は X の間の非線形関係も考慮でき、さらに X の時間遅れを考慮して潜在変数を計算できます。これによりプロセスの動特性と X, Y のノイズに対応できると考えられます。GPDM で計算された潜在変数と Y との間でソフトセンサーを構築します。
さらに、JIT モデリングにより適応型ソフトセンサーにします。これにより X と Y の関係の時間変化に対応できると考えられます。GPDM の潜在変数の数や JIT モデリングにおけるサンプル数といったハイパーパラメータについては、値の組み合わせをたくさん準備して、それぞれ適応型ソフトセンサーを構築し、最後にアンサンブル学習をします。複数の適応型ソフトセンサーを準備することで、色々なプロセス状態に対応できると考えられます。
ただし、一般的なアンサンブル学習のように平均を取るのではありません。プロセス状態ごとにそれを得意とするモデルは異なると考えられることから、それぞれ予測するごとに重みをつけ、重み付き平均で予測値を計算します。モデル A が得意なプロセス状態のときはモデル A の重みが大きくなり、モデル B が得意なプロセス状態のときはモデル B の重みが大きくなるようなイメージです。
2 つのプラントにおけるデータセットを解析して、他の JIT モデリングによる適応型ソフトセンサーの予測精度を比較しまして、提案手法により予測精度が向上することを確認しました。ご興味がございましたらご覧いただければと思います。
以上です。
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