金子研の研究成果の論文が Analytical Sciences に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
Design of a green ammonia production process by machine learning
です。これは修士卒の髙岡翔さんが取り組んだ研究の成果です。
脱炭素社会の実現に向けた手段としてグリーンアンモニアが注目を集めていますが、再生可能エネルギー由来の電力を使用するため電力供給が限られており、分散型の小規模プロセスの設計が求められています。従来のプロセス設計における変数の最適化では、設計変数の数が増加すると最適な候補を探索するために膨大な数のシミュレーションが必要となり、時間とコストの面で非現実的であるという課題がありました。この課題を解決するため、本研究では機械学習の手法であるベイズ最適化を導入し、限られた電力供給下でグリーンアンモニアの生産量を最大化する製造プロセスの効率的な設計と最適化を実施しました。
具体的には、商用プロセスシミュレータであるAVEVA Process SimulationとPythonを連携させ、アンモニア合成反応部における冷却方式や反応器のベッド数が異なる6種類のプロセスを設計して比較検討を行いました。水素や窒素の供給量、反応器の入口温度や圧力、分離器の条件など12個の物理パラメータを設計変数として設定し、目的変数をグリーンアンモニア生産量と消費電力の2つに設定しました。そして、目標達成確率(PTR)に基づく獲得関数を用いたベイズ最適化を活用することで、シミュレーションと候補の選定を反復し、消費電力を10 MW以下に抑えつつ生産量を最大化する条件を探索しました。
その結果、4ベッドの断熱間接冷却反応器を用いたプロセスにおいて、初期のD-最適基準による30回のシミュレーションと106回のベイズ最適化を合わせた合計136回のシミュレーションで、設定したすべての目標変数を達成する最適解を発見することに成功しました。最適化の結果、消費電力を9.5349 MWから9.9939 MWへ制約を満たす範囲内で有効に利用しながら、アンモニアの生産量を754.34 kmol/hから831.69 kmol/hへと約10%向上させることができました。さらに、今回設計されたプロセスの性能をこれまでに報告されている他のグリーンアンモニア製造プロセスと比較したところ、10 MW以下の消費電力という条件下において最大の生産量を達成していることが確認されました。これらの成果は、ベイズ最適化を用いることで100万通りもの膨大な候補の中から目標を達成する条件を極めて効率的に探索でき、新規プロセス設計における大幅なコストと時間の削減が可能であることを示しており、今後のグリーンアンモニア製造の社会実装に向けた実践的な基盤となるものです。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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