本田技術研究所をはじめとする複数機関と金子研における共同研究の成果の論文が Nanoscale Advances に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
です。これは共同研究として本田技術研究所をはじめとする複数機関の方々と一緒に研究した成果です。
自動車の排ガス浄化用触媒には、高い活性と熱的耐久性が求められ、同時に白金族金属(PGM)の使用量削減が課題となっています。近年のデータ駆動型材料探索では初期活性(フレッシュな状態)を重視する傾向がありますが、実際の環境で重要となる熱劣化後(ポストエイジング)の耐久性が軽視されていました。そこで本研究では、劣化後の触媒活性を主要な設計指標とし、実用的な多元素合金触媒を効率的に発見するためのクローズドループ型ハイスループット探索フレームワークを構築しました。
構築されたシステムは、①連続フロー合成装置によるハイスループット(HT)触媒合成、②HT評価装置による劣化後性能の自動評価、③機械学習モデルの構築やモデルの直接的逆解析による次世代の組成・プロセス条件の予測、というサイクルを回す仕組みです。ターゲットガス(NO、CO、プロピレン、および難反応性のイソペンタン)に対する浄化率を最適化するため、合計1493個の触媒を合成・評価しました。
探索の結果、低温活性、総合浄化率、耐久性の面で基準となるパラジウム(Pd)触媒の性能を上回る組成を100種類以上特定しました。IR分光法や電子顕微鏡による解析から、劣化後の性能向上は単純な形態劣化ではなく、熱処理によって異なる元素間(CuとPtなど)に協働的なサイトが形成され、電子状態が再構築されることに起因すると判明しました。
触媒の組成だけでなく製造条件も極めて重要です。機械学習は、低温かつ高アルカリ条件での合成がアルミナとの混合酸化物形成を抑制し、金属と担体の相互作用を最適化して高性能化に寄与することを見出しました。また、ランダムな探索と比較して、予測モデルを用いた本手法は発見効率を20倍以上向上させることに成功しました。
本研究は、実際の触媒がさらされる劣化を前提としたデータ駆動型の探索アプローチを確立しました。これにより、合金の設計、プロセス情報学、機械学習が統合され、実用的かつPGMを効率的に利用できる自動車用触媒の開発が大きく加速すると期待されます。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。
以上です。
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