永井研と金子研における共同研究の成果の論文が ACS Omega に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
です。これは共同研究として明治大学の永井先生の研究室の方々と一緒に研究した成果であり、修士卒の落合晴希さんが取り組んだ研究の成果です。
地球温暖化対策としてCO2の効率的な分離回収技術が急務となる一方、プラスチックによる環境汚染問題も深刻化しており、環境中で分解される生分解性を持つ材料が求められています。しかし、高分子膜の開発において、ガスの透過性と選択性はトレードオフの関係(Robeson upper bounds)にあり、これらを高いレベルで両立しつつ、さらに生分解性も兼ね備えた材料を発見することは従来の手法では困難でした。
本研究では、機械学習を用いてガス透過性・選択性と生分解性を統合的に予測し、高性能かつ環境に優しいCO2分離膜の候補材料を効率的に探索・設計する枠組みを開発することを目的としています。本研究の特筆すべき点は、データの質と扱い方にあります。ガス透過性予測モデルに関して、一般に文献データは測定条件がバラバラでノイズを含みやすいですが、本研究では合成・製膜条件が統一された単一研究機関 (永井研究室) の実験データセットのみを使用しました。これによりデータの信頼性を高め、モノマーの構造情報(RDKit記述子)に加え、密度やガラス転移点などの物理特性を説明変数に組み込むことで、小規模なデータ数でありながら極めて高い予測精度(決定係数 R2 > 0.9)を実現しました。
生分解性予測モデルに関して、OECD等のガイドラインに基づく試験データを使用しましたが、試験法によってはデータ数が少ないという課題がありました。これに対し、転移学習と線形補間を導入してデータを拡張・補強することで、予測精度の向上に成功しました。
有望な材料候補の発見構築したモデルを用いて、物質・材料データベース(PoLyInfo)に含まれる3219種類のポリマーに対してスクリーニングを行いました。その結果、2019年に更新されたRobeson upper boundsを超える、極めて高い分離性能を持つ候補として、CO2/N2分離で590種、CO2/CH4分離で492種のポリマーを特定しました。さらに、これらの高性能な候補材料の中から、生分解性(易分解性)を持つと予測されるポリマーを絞り込みました。構造的には、エーテル結合を持つ脂肪族などの既知の構造だけでなく、特定の芳香族構造を持つものも生分解性の候補として抽出されました。
本研究は、ガス分離性能と生分解性という、異なる特性を別々のモデルで予測し、それらを組み合わせるデュアル・スクリーニングの手法を確立しました。これにより、従来の性能限界を突破しつつ環境負荷も低減できる多機能な次世代膜材料の候補を具体的に提示しました。提示された候補構造は、今後の実験的検証やサステナブルな材料開発における重要な指針となることが期待されます。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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