分子骨格の農薬活性を予測するモデルおよび農薬らしさのスコアを開発しました![金子研論文]

金子研の研究成果の論文が ACS Omega に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Development of Pesticide-Likeness Scores and Models for Predicting Pesticide Activity of Molecular Scaffolds with Machine Learning

 

です。これは2024年度修士卒の酒井優太さんが取り組んだ研究の成果です。

本研究では、農薬分子の効率的な設計に向けて、特定の標的生物に依存しない pesticide-likeness (農薬らしさ)スコア の提案と、分子骨格に基づく活性予測モデルの開発を行いました。従来、農薬活性は害虫、雑草、菌類など多様な生物種ごとにモデルを構築する必要があり、効率性に課題がありました。本研究では、PubChem の活性データを対象ごとに横断的に統合し、活性/非活性を判別する機械学習モデルを多数構築し、その予測確率を pesticide-likeness スコアとして定義しています。このスコアを分子記述子として活性予測に用いた結果、一般的な分子記述子(RDKit、MACCS、ECFP など)と同等の予測精度を示し、種を跨いで構造的に共通する「農薬らしさ」を捉えていることが示されました。

次に、農薬活性に強く影響する分子骨格に着目し、既存農薬から抽出した分子骨格の活性を、機械学習により三値分類(Low/Middle/High)で予測するモデルを構築しました。特に ordinal regression を用いたモデルは高活性クラスの誤分類が少なく、有望スキャフォールドの探索に適していました。さらに、国内化学メーカーの大規模データベースから 52 万件超のスキャフォールドを生成し、適用可能領域内の約 23 万件に対して活性を予測したところ、951 の高活性候補スキャフォールドを抽出できました。また、SHAP による可視化により、特定結合や官能基が活性に与える局所的な寄与を可視化し、新規知見を得ています。

最後に、提案した pesticide-likeness スコアをスキャフォールド活性予測に利用したところ、従来の分子記述子より広い情報を反映した特徴量として有効であることが示されました。これらの結果から、本研究の手法は農薬探索の初期段階において、有望候補の絞り込みや構造設計を加速させる新しいアプローチとして機能すると期待されます。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上です。

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