分離化学工学の講義を担当していまして、
履修している学生の中には、化学工学に対して苦手意識をもっている学生もいます。化学工学でやっていることって、モデリングして、シミュレーションして、最適化するって感じなんですが、まあ分かりにくいですよねw。
そこで、化学工学の内容をわかりやすく伝えることで、学生の皆さんに苦手意識をなくしていただくため、何かいい例えはないかなーと探していました。
いろいろと考えた結果、化学工学でやっていることって、海外旅行と近いんじゃないか!?ってことで、少し書いておきます。
海外旅行
多くの人にとっては、海外旅行ってそんなにたくさん行けるわけではないですよね。国ごと、都市ごとにしてみたら、一生のうちに一回しか行かないこともしばしばです。たとえば、タイに行くのとか、パリに行くのとか、そんなに何回も行けませんよね。
なので、一回の旅行で満喫しまくろうと気合いを入れるわけです!
そこで何をするかというと、行く国・都市のことを徹底的に調査します。旅慣れた人だと、事前に調べずに行き当たりばったりでも楽しめるかもしれません。ただ、はじめてだとやっぱり不安ですので、いろいろ調べるわけです。たとえばパリに行くとしたら、エッフェル塔やルーブル美術館はどこにあるのか、美味しそうなレストランはどこにあるのか、地下鉄はどこをどんな感じで通っているのか、など調べるわけです。わたしの場合は、「地球の歩き方」という本をよく買います。その国・都市の観光スポット、ホテル、レストラン、豆知識など、いろいろな情報がありますからね。
調べたら、旅行の日程に合わせて、旅のプランをつくります。この日は何時にどこをでて、どこに行って遊ぶか、ランチはどこで食べるか、など計画をたてるわけです。いくつかプランをたててみて、その中でどのプランにしようか、検討するのも楽しいですよね。
プランが決まり、実際に海外旅行に行き、思う存分楽しむことになります。もちろん、計画の通りに進まないこともありますが、地球の歩き方をもって調べながら、計画を修正して旅を続けます。
海外旅行に行くときは、だいたいこんな感じではないでしょうか。
化学工学
化学工学も、海外旅行に行くときとだいたい同じなのです。
まず本題に入る前に、そもそも理学と工学の違いってこんな感じです。
#明治大学分離化学工学
理学は『分かる』ことを目指し、工学は『決める』ことを目指します。
工学では決められればよいので、正確に分からなくてもよいのです。決定に影響が出ない程度の仮定は躊躇なく置き、問題をなるべくシンプルにしてから解いていきます。これがハマると実にエレガントです。— 金子弘昌/Hiromasa Kaneko (@hirokaneko226) 2017年4月24日
化学工学も、工学の一つです。化学について研究したり、化学を応用したりするのも、「決める」 ためなのです。
では何を決めるのか?
それは、化学 (産業) プラントを設計したり、つくったり、つくった後に運転するために必要になることです。化学プラントというのは、化学製品をつくる施設や装置のこととお考えください。何の化学製品を、どのくらい、どうやってつくったらいいのか、決めなければなりませんよね。もちろん、化学製品をつくり続けるために、施設・装置を運転し続けなければなりませんので、そのために決めることもあります。
化学プラントはとても大きいですので、とりあえずつくってみよう!ってことはできません。お金や時間がかかりすぎてしまいますからね。海外旅行に何回も行けないのと似ています。
そこで、海外旅行で旅行に行く前に検討するのと同じで、プラントをつくるまえにいろいろと検討するのです。
まずはモデリングです。地球の歩き方で旅行先について調べることに対応します。化学工学では、プラントの中で起こりうる現象を、化学、数学、そして物理を駆使して、数式で表すのです。そのために実験したり、実験結果から数式を導いたり、データ解析によって計算したりします。分離化学工学の講義では、「分離」 の分野にしぼって、このあたりを学びます。
モデリングができたらシミュレーションです。モデリングによってつくられた数式を使って、あたかもプラントがあるかのように、数式ベースで (パソコンの中で) プラントをシミュレーションするのです。海外旅行の計画をいくつもたてることに対応します。明治大学の応用化学科では、分離化学工学の講義の後、秋学期に化学情報実験Dでこのあたりを学びます (これもわたしが担当します)。
そして、シミュレーションの結果に基いて最適化です。コンピュータ上で、どんな化学製品をつくったらよいのか、どのくらいつくったらよいのか、どうやってつくったらいいのか、どのようにつくり続けたらよいのか、最も適したものを決めるのです。海外旅行において、いくつものプランの中から一番よいものを選ぶのに対応します。このあたりは、研究室でやることになりますかね。
というわけで、化学工学でやっていることを海外旅行でたとえてみました。海外旅行に行ったことない人はどうすればいいかって?、すぐに海外旅行に行きましょう!w
以上です。
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