宮崎大学大島研と金子研における共同研究の成果の論文が ACS Omega に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
Design of Gold Extraction Solvents Using Machine Learning Models
です。これは共同研究として宮崎大学の大島先生の研究室の方々と一緒に研究した成果であり、常見拓⼤さんが学部生の頃に取り組んだ研究の成果です。
電子廃棄物(e-waste)からの金(Au)回収は、環境保護および経済的な観点から重要性を増しています。現在、金の溶媒抽出にはジブチルカルビトール(DBC)が広く用いられていますが、DBCは高い抽出能(98.2%)を持つ一方で、水への溶解度(3.0 g/dm3)が高く、水相への有機溶媒の混入や損失が問題となっています。そこで本研究では、DBCと同等以上の高い抽出能(E)を持ち、かつ低い水溶解度(S)を持つ新規溶媒を探索することを目的とし、機械学習を用いた予測モデルの構築を行いました。
Eの予測には100サンプルの実験データ、水溶解度Sの予測には1290化合物のデータセットを使用しました。説明変数には、分子構造の特徴を表すRDKit記述子やMACCSKeysに加え、COSMO-RS法で計算される表面電荷密度分布(σ-profile)を導入しました。σ-profileは分子表面の電荷の偏りを定量化できるため、イオンが関与する金の溶媒抽出において有効な指標となります。
変数選択には遺伝的アルゴリズム(GA)を用い、特にσ-profileに対しては領域ごとに変数を選択するGAWLS(Genetic Algorithm-based Wavelength Selection)を適用することで、予測精度の向上とモデルの解釈性の両立を図りました。
構築された抽出能予測モデルは、RDKit、MACCSKeys、およびGAWLSで選択されたσ-profileの領域を組み合わせることで、高い予測精度を達成しました。また、水溶解度予測モデルも高い予測精度を持つことを確認しました。
モデルの解析から、金の抽出メカニズムに関する新たな知見も得られました。σ-profileの解析により、溶媒分子が直接AuCl4– を引き寄せるのではなく、溶媒表面の負電荷領域がプロトンを引き寄せ、電荷バランスを保つためにAuCl4– が対イオンとして追随するという抽出機構が示唆されました。
構築したモデルを用いて逆解析を行い、市販の化合物データベースからDBCを超える性能を持つ候補物質を探索しました。その結果、予測された6つの有望な化合物について実際に実験を行ったところ、すべての化合物で90%以上の抽出率が確認されました。
特に、(-)-フェンコン((-)-fenchone)および4-フェニル-2-ブタノン(4-phenyl-2-butanone)は、DBCと同等の高い抽出能を示しつつ、水溶解度の予測値はDBCよりも低いことが確認されました。これらは、溶媒損失や環境負荷を低減できる新たな金抽出溶媒として有望です。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
質問やコメントなどありましたら、X, facebook, メールなどでご連絡いただけるとうれしいです。
