金子研の研究成果の論文が The Journal of Physical Chemistry C に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
です。これは修士卒の石川愛理さんが取り組んだ研究の成果です。
安全性の高い全固体電池の実現に向けて、高いイオン伝導度を持つ新しいリチウム固体電解質の開発が急務となっています。機械学習を用いた材料探索が盛んに行われていますが、従来のアプローチには大きく分けて二つの限界がありました。一つは、化学組成のみをベースにしたスクリーニングです。固体電解質のイオン伝導度は結晶構造に強く依存するため、組成だけの情報では有望な材料を見落としたり、逆に適切な構造を持たない組成を不当に高く評価してしまう問題がありました。もう一つは、既存の結晶構造データベースに依存したスクリーニングです。この手法は構造情報を取り入れられるものの、データベースに未登録の全く新しい組成や構造を持つ未知の材料を探索空間に含めることができないという欠点がありました。
本研究で提案した手法の最大のインパクトは、これら二つの限界を同時に打ち破り、既存のデータベースに一切縛られることなく未知の固体電解質候補を生成・評価できる「モジュール式の2段階機械学習ワークフロー」を新たに構築した点にあります。このワークフローは、まず第1段階として、設定した制約条件の下で未知の化学組成を網羅的かつ遺伝的アルゴリズムを用いて生成し、機械学習モデルでイオン伝導度や生成エネルギーを予測して有望な組成を絞り込みます。続く第2段階では、選び出された組成に対して対称性を考慮した様々な結晶構造を自動生成し、機械学習ポテンシャルを用いて構造を最適化します。その上で、生成された未知の結晶構造の特徴を捉える記述子を用いて、構造レベルでのランキングを行います。
この手法を実際に適用した結果、4,600個もの未知の結晶構造を生成・評価し、その中からLi10N10SiS8Iという、既存の文献には存在しない有望な新規組成およびその結晶構造の候補を導き出すことに成功しました。本研究の貢献は、特定の材料を確定的に発見したことではなく、計算コストの非常に高い第一原理計算や実際の合成実験に進む前に、膨大な未知の材料空間から有望な仮説を効率的に絞り込むための「早期の優先順位付けシステム」を確立したことです。既存の優れたアルゴリズムを統合することで、組成の提案から構造を考慮した評価までのシームレスな仮説生成パイプラインを実現した本手法は、リチウム固体電解質探索の枠組みを大きく拡張し、次世代材料の開発プロセスを劇的に加速させる画期的なアプローチと言えます。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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