金子研の研究成果の論文が ChemistrySelect に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
Descriptor-Based Zero-Shot Learning for Predicting Catalytic Constituent Elements
です。これは専門研究員の真木純さんが取り組んだ研究の成果です。
本論文は、触媒設計における最大の課題である「構成元素の組み合わせ爆発」を解決するための画期的なアプローチとして、記述子ベースのゼロショット学習を提案しています。従来の触媒開発では、膨大な数の元素の組み合わせを実験や機械学習によるスクリーニングで探索する必要があり、未検証の元素を含む新しい触媒系の発見には多大なコストと時間が必要でした。
本研究では、この課題を克服するため、ある特定の元素を含まないデータセットで機械学習モデルを学習させ、その未知の元素を含む触媒の性能を予測するという試みを行っています。メタンの酸化カップリング(OCM)反応を対象に、元素やその酸化物が持つ物理化学的性質を記述子として用いることで、未知の元素に対する予測を可能にしました。24種類の回帰モデルを評価した結果、ランタン(La)やストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)といった元素においては、それらを学習データから完全に除外した状態であっても、他の元素のデータからその触媒効果を妥当な精度で予測できることが実証されました。一方で、リチウム(Li)のように他の元素と物理化学的性質が大きく異なる特異な元素の予測は困難であることも明らかになり、本手法が遷移金属やランタノイドなど、類似した性質を持つグループの元素において特に有効であることが示されています。
この提案手法の最大のインパクトは、これまで実験的に評価されていなかった未知の元素の組み合わせに対しても、既存の触媒データと元素の物理化学的特性を紐づけることで、実験を行う前にその有効性を予測できる道を開いた点にあります。特に、酸化物のバンドギャップや酸化物生成のギブス自由エネルギーといった電子構造や熱力学的安定性が予測の成功を左右する重要な要因であることも突き止めています。このゼロショット学習のアプローチを活用することで、有望な元素の組み合わせを特定するために必要な実験や試行錯誤の回数を劇的に削減し、未知の領域における新触媒の発見を飛躍的に加速させる可能性を秘めています。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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