三菱ケミカルと金子研における共同研究の成果の論文が Analytical Sciences に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは
です。これは共同研究として三菱ケミカルの方々と一緒に研究した成果であり、修士卒の松原正佳さんが取り組んだ研究の成果です。
本論文は、鉄鋼業などで広く用いられる不可欠な材料であるコークスの製造において、原料とプロセス条件から製品特性を予測する機械学習モデルを構築し、所望の特性を持つ材料を製造するための最適なプロセス条件を設計する手法について述べています。コークスの品質は原料とプロセス条件に大きく影響されますが、原料の成分は産地や製造時期によって変動するため、目標の品質を維持するには原料ごとに適切なプロセス条件を調整・設計する必要があります。
本研究では、連続プロセスであるニードルコークスと、バッチプロセスであるピッチコークスの2つの異なる製造プロセスの実データセットを用いて検証を行いました。ニードルコークスの製造プロセスにおいては、複数の工程が存在し、すべてのプロセス変数が製品特性に影響を与えるわけではないという課題がありました。そこで、複数の製品特性を同時に最適化するために、多目的最適化手法であるNSGA-IIと、遺伝的アルゴリズムを用いてプロセス変数とその時間遅れを選択するGAVDSを組み合わせた手法NSGA-II-VDSを提案しました。
検証の結果、提案手法であるNSGA-II-VDSは、従来のGAVDSと比較して、複数の製品特性に対してより安定的かつ高い予測精度を持つモデルを構築できることが確認されました。一方、ピッチコークスの製造プロセスにおいては、製品品質を安定させるためにバッチ(製造単位)にかかる時間が変動するという特徴があります。これに対応するため、最も長いバッチ時間を基準にして時系列データを補間する手法を採用し、iterative Gaussian Mixture Regression(iGMR)を用いてデータの欠損値を補完しました。その結果、平均値によるデータ補間、iGMRによる欠損値補完、およびLASSO回帰を組み合わせたモデルが最も高い予測精度を示すことが分かりました。
さらに本研究では、構築した高精度な予測モデルに対し、T-Genというツールを用いて仮想的な時系列データを大量に生成して逆解析を行いました。特定の原料データに対してこれらの仮想データをモデルに入力し、予測される製品特性が目標値の仕様内に収まるような有望なプロセス条件を導き出すことに成功しました。また、Cross Validated Permutation Feature Importance(CVPFI)を適用することで、製品特性の予測において重要となるプロセス条件とその経時変化を視覚化し、品質を目標範囲内に収めるための特徴的な振る舞いを特定しました。これらの提案手法は、経験や試行錯誤の繰り返しに頼っていた従来のプロセス設計のコストを削減し、今後のコークス製造プロセスの効率化に貢献することが期待されています。
興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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