はじめてのプレゼンテーションに向けて

今回の記事は、研究内容についてのプレゼンテーションをはじめてする方々に向けた内容です。

研究成果を出したあとは、もちろん論文を書くこともありますが、学会発表などでプレゼンテーションをすることもあります。ここではプレゼンテーションの準備の仕方や、実際にプレゼンテーションするときの注意点についてまとめます。

 

そもそも、なぜ研究内容をプレゼンテーションするのか?

プレゼンテーションをするのは、伝えたいことを相手に伝えるためです。そのため、いくらキレイなスライドを作って、スラスラとプレゼンしたとしても、それが相手に伝わっていなかったら、まったく意味がありません。プレゼンにおける成功は、誰か偉い人にプレゼンを褒められることではなく、プレゼンで伝えたいことが相手に伝わったことです。

ちなみに、伝える価値のある内容、つまり研究成果をもっていることが大前提です。

相手に伝えたいことを伝えるため、プレゼンテーションを設計するようにしましょう。

 

文章とプレゼンテーションの違い

プレゼンテーションではなく、何かしらの文章を書いて 「これを読んでね」 でも、伝えたいことは伝えられます。では文章とプレゼンテーションの違いは何でしょうか?

詳細はこちらにありますが、

お話で届けるのは平等(equality)なもの、文章で届けるのは公正(equity)なもの~お話(講義・講演・講習会)と文章(テキスト・本・連載・記事・論文)での説明の仕方の違い~
大学で講義をしたり、 企業やいろいろなイベントで講習会をしたり、 実験や演習用のテキストを書いたり、本を書いたり、 連載記事を書いたり、 いろいろな形式で “教える” を実践しています。 また、研究成果は学会などで発表したり論文の形で報告し...

 

まとめると以下の違いがあります。

 

文章 (テキスト、本、論文、記事など)

  • 読む人ごとに読む時間が異なる
  • 読む人は、知らないことを調べながら読める (参考文献、Google 検索など)
  • 形式がほとんど決まっている (文章、式、図、表)

 

プレゼンテーション

  • 時間は一定 (研究発表では、10 分とか 15 分とか)
  • 聴く人は、基本的に聴くのみ (調べながら聴くのは難しい)
  • 形式は、結構自由 (アニメーション、動画なども OK)

 

これらの特徴をふまえてプレゼンテーションを設計するとよいでしょう。

 

プレゼンテーションを準備するときの心構え

プレゼンテーションを考えるときにまず意識することは、一に話、二にスライド、ということです。基本的に、スライドがなくても話ができるように準備しましょう。スライドは話の補助のために、聴き手が理解しやすくなるために使用します。実際に話をするときも、スライドに頼らないで話ができるようになりましょう。

聴き手には、スライドの中の文章を読ませるのではなく、文字を見せる意識でスライドを準備するとよいです。聴き手としては、話を聴きながらスライドの文章を読むのはなかなか大変です。意識が読む方に向いてしまうと、聴き漏らしも出てきてしまいます。注意しましょう。

原稿があるとき、話をするときに原稿を見てはいけません。話しながらレーザーポインターで適切なところを指しながらプレゼンすることや、身振り手振りも重要ですが、原稿を見ながらではそれらができません。聴き手やスライドを見ながら話ができるようになりましょう。

プレゼンテーションの準備ができたら、他の人に確認してもらうとよいです。先に述べたように、プレゼンテーションの目的は伝えたいことを伝えることです。自分は伝えたつもりでも、人には伝わっていない可能性もあります。このあたりを確認してもらうとよいでしょう。

 

プレゼンテーションでやってはいけないこと

いろいろなプレゼンテーションを聴いたことのある方は分かるかもしれませんが、プレゼンテーションには、たった一つの正解があるわけではありません。人の数だけプレゼンテーションの正解があります。ただ、プレゼンテーションの不正解は共通したものがあります。プレゼンテーションの地雷を避けることが大事です。

プレゼンテーションでやっていないことは以下の通りです。

 

  • 相手の頭に 「?」 を2個以上出す
    • 知らない単語を、説明する前に 2 個以上出す
    • 論理の飛躍が 2 個以上ある
  • 自分で理解していない内容を話す
  • プレゼンテーションで、資料 (レジュメ) を使う
  • 「えー」 などを多用する
  • 声が小さすぎる、大きすぎる
  • レーザーポインタで変なところを指す

 

これらを避けることで、ある程度のプレゼンテーションができるようになります。注意しましょう。

 

プレゼンテーションの準備

以上をふまえた上で、プレゼンテーションの準備は以下の順番でやるとよいです。

  1. 聴く人はどんな人たちか把握する
  2. プレゼンテーションの流れを決める
  3. 話す内容を決める
  4. 話す内容を他の人にチェックしてもらい、修正する
  5. スライドを準備する
  6. スライドと話す内容を他の人にチェックしてもらい、修正する
  7. 必要に応じて、原稿を作る
  8. プレゼンテーションの練習をする

 

まず、聴く人はどのような人たちなのか、把握することが大事です。

  • どのような背景をもっている人か?
  • 普段はどのような研究や開発をしているのか?
  • どのような言葉を使えば分かりやすい、聞きやすいと感じてもらえるか?
  • 何を目的にして発表を聴いているか?

 

このあたりを把握しておくことが重要です。発表する場 (会議や学会など) 情報や、他の研究発表の内容をふまえて、聴く人のことを想像しましょう。研究室内で使っている言葉が、外の人には伝わらないこともあります。注意しましょう。

その後はどのような順番で話を進めるか、プレゼンテーションの骨格を決めます。ただ、これも正解はありません。どうすれば伝えたいことが伝わるかをよく考えて、流れを決めるとよいです。ちなみに、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 自己紹介
  2. 発表の概要
  3. 背景
  4. 問題点
  5. 目的
  6. 方針
  7. 手法
  8. 結果と考察
  9. まとめと今後の予定

 

ただ、あくまで一般的な話ですので、特にこれに縛られる必要はありません。

その後、話す内容を決めます。プレゼンテーションの時間をふまえて上で、決めた流れに沿って、どのような内容を話すか決めましょう。特に背景において、聴く人のことをしっかり把握しておくことが重要です。聴く人が分かりやすい背景の説明にします。

話す内容については、他の人にチェックしてもらいながら修正するとよいです。このとき、たとえば学生は、指導教員だけでなく、先輩・同期・後輩の学生にもチェックしてもらうとよいでしょう。実際に発表を聴く方には、いろいろな背景をもっている方がいますので、さまざまな意見を聞けるとよいですね。

話す内容が決まったら、スライドを準備することになります。話す内容をサポートするようなスライドを作成しましょう。スライドを準備する注意点は以下の通りです。

 

  • 文字のサイズは基本的に 20 以上、できれば 24 以上
  • スライドには、見えなくて (読めなくて) よい文字はない (書くなら見せる、見せないなら書かない)
  • 聴き手には、なるべくスライド中の文章を読ませず、文字を見せる
  • なるべくシンプルに作成する
  • アニメーションは、必要なところだけにする

 

ちなみに、スライド作成のときに参考になるウェブサイトはこちらです。

 

スライドの内容も他の人にチェックしてもらうとよいです。

特に、プレゼンテーションがはじめてだったり、あまり経験していなかったりする方は、面倒ですが原稿を作った方がよいです。原稿を作りながら、実際に話す内容も整理されていくでしょう。

プレゼンテーションの練習するときは、単に原稿を覚えるだけでなく、本番を想定して練習するようにします。身振り手振りやレーザーポインタの使い方も本番さながら練習するとよいです。このとき、指導教員や先輩・同期・後輩の学生にも付き合ってもらって、いろいろ指摘してもらうとよいでしょう。

 

本番での注意点

実際にプレゼンテーションをするとき、会場には早めに到着し、場の雰囲気に慣れておくとよいです。そして、事前に司会 (座長) の人に挨拶や自己紹介をしましょう。司会の方がセッションを取り仕切り、発表の紹介をしたり質疑応答に移行したり、積極的に質問してくれたりします。発表時間、質疑応答の時間、発表前や発表後の流れなど、最終確認をしておくとよいでしょう。

たまに、いざプレゼンテーションをはじめようとするときにパソコンの画面がうまく投影されなかったり、スライドをうまく送れなかったりすることもあります。可能な限り、事前に投影やスライド送りのチェックをするとよいです。あとは、練習を信じてプレゼンテーションするのみです。頑張りましょう!

 

質疑応答

プレゼンテーションが終わりましたら、質疑応答の時間になります。質問に回答するときに重要なことは、回答する前に相手が質問したいことを 100 % 理解することです。相手から質問されたことは回答する一方で、質問されていないことには回答しないようにします。質問を理解していないのに回答し始めないよう注意しましょう。

回答するとき、分からないことを素直に分からないと答えるのは特に恥ずかしいことではありません。ただ、うまく答えられなかったときには、質問した人の顔を覚えて、セッション終了後の休憩時間に話しかけるとよいです。

 

おわりに

プレゼンテーションに必要な能力は何かと聞かれたら、想像力と答えます。伝えたいことを伝えることがプレゼンテーションの目的であり、相手のことをどれくらい想像できるかが重要であるためです。

想像力のベースとなるのは自分の体験であり、場数を踏むことが大事です。さらに、いろいろな文章を読んだり、いろいろな発表を聴いたりするとよいでしょう。この文章は分かりやすい、この発表は聴きやすい、と感じたら、それはなぜか?を考えます。他の人が自分の文章を読んだときの感想や、発表を聴いてもらったときの感想も参考になります。ぜひ想像力を鍛えましょう。

 

なお、研究発表のメリット 10 個がこちらに書いてあります。参考になると幸いです。

学会で研究成果を発表する10個の価値
自分で研究を進める中で、ある程度の研究成果が出てくると、「こんな研究成果をあげたぜ!」と、他の人にも伝えたくなるものです。逆に、他の研究者がどんな研究成果をだしているのかも気になります。 研究成果を公表する方法として、論文発表と学会発表とが...

 

プレゼンテーションのためのオススメの書籍は、こちらで紹介しています。

本の紹介 (データ解析・機械学習・プレゼン・論文執筆 関連)
データ解析・機械学習を始める方や、データ解析・機械学習の 「初級」 から 「中級」 に移りたい方によく質問されるのは、「勉強するためにオススメの本はありませんか?」 です。 皆さんも興味があると思いますので、時間を見つけて改めて本を読み直し...

 

素敵なプレゼンテーションになることを祈っています!

 

以上です。

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