データ化学工学研究室 (金子研) では一週間に一度、ゼミにおいて学生ごとの研究の進捗を報告してもらっています。学生ごとに報告してもらったあとは、他の学生たちやわたしが、質問やコメント・アドバイスをして、研究内容について議論します。
わたしからの質問として、もちろん研究内容ごとの質問もありますが、他に、学生全員に共通するような質問もあります。今回はそのような質問をまとめながら、質問を通して学生たちに何を伝えたいか、説明したいと思います。
✓どうしてそれをやったのですか?
学生たちがいろいろと解析をする中で、気になるところがあったら質問します。解析をやるときには、大きな目的・小さな目的とありますが、必ず目的があり、解析はその目的を達成するための手段です。目的について質問することで、そもそもその目的は達成しなければならないものなのか、達成すべきものだったら、目的に対しての手段として適切か、考えるきっかけになると思います。
✓それをやることで、どんなよいことがあるのですか?目的にどのような形で貢献しているのですか?
上の質問にも関連していますが、手段と目的を考えてもらうための質問です。もちろん、ある解析が直接的に目的に貢献していることばかりではありませんので、目的までの流れも聞きます。
✓それのメリット・デメリットは何ですか?
工学は何かを 「決める」 ための学問です。
意思決定したときに、多くの場合はメリットを強調しがちですが、すべての物事にメリットだけでなくデメリットがあると思っています。もちろん、デメリットのためにそれを止めるわけではありませんが、デメリットを認識しておくことが大事です。認識していれば事前に対策もできます。なので、メリットだけでなくデメリットもちゃんと聞くようにしています。
✓そこまでのストーリーはどうなっていますか?
すべての研究には、基本的に過去の研究があります。その研究の流れの最先端として、今の研究があるわけです。また、研究発表をするときには、こちらのような流れがあります。
これらのような観点から、今の研究までのストーリー、研究発表におけるストーリーを学生に考えてもらうために、この質問をしています。
✓そこからのストーリーはどうなりますか?
上の質問に関連して、そこまでのストーリーだけでなく、そこからのストーリーも質問します。今後の研究計画と将来展望をもって研究をすすめることが大切です。研究発表でも、これからの発表の流れを考えて、今のスライドの説明をすることが重要です。
✓一つ上の視点から見てみましょう!
ストーリー全体、別のストーリー、それらを包含したストーリーを考えたときに、今の研究の位置づけを考えてもらうため、このような質問をしています。
✓適切に比較できていますか?適切に評価できていますか?
上で述べたように、研究には過去の研究があり、基本的にはそれと比べながら研究を進めます。従来手法と提案手法を比較するわけです。自分の研究に有利な条件、もしくは不利な条件で比較しても意味がなく、適切に比較する必要があります。また、自分の研究成果が実用化されることを想定して、実用に耐えうるかどうか、適切に評価する必要もあります。これらのことを意識して研究を進めてもらうため、このような質問をしています。
✓解像度をあげて結果を見るとどうなりますか?
たとえば何か解析して結果がでてきたとき、その評価として、よかった、わるかっただけでは、解像度が低いです。次につながりません。解像度についてはこちらに少し書きました。
解像度を上げて結果を確認することで、より深い解析・研究ができるように、この質問しています。
✓このスライドを見た人はどう考えますか?
ゼミの中での研究発表でも、学内での発表でも、学外での発表でも、わかりやすいスライドを作成することが大事です。必要十分な情報を、見る人・聴く人が “わかりやすいように” スライドに載せる必要があるわけです。“わかりやすいように” するためには、見る人の視点にならないといけません。それを意識してもらうために、この質問をします。
✓誰に向けての話すことを想定していますか?
これは特に発表練習のときの質問です。上のスライドのところで、” 必要十分な情報” について書きましたが、それは発表を聴く人によって変わります。聴く人のバックグラウンドによって、発表内容を変える必要があります。このことを意識して発表準備をしてもらうため、この質問をします。
以上です。
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