こちら↓に学生の要旨や論文を、学生と確認・修正する方法について書きました。
今回は、その最初の要旨・論文チェックにおいて、いろいろな学生に共通して、いつも伝えていることを整理します。今後は、金子研の学生も、こちらの記事を事前にチェックして、自分で自分の要旨・論文を修正できるようになりましょう。
それでは順番に説明します。
1. Introduction (緒言) に書く内容を把握して整理する
こちらは以下にすでに書きましたのでこちらをご覧ください
研究目的までしか書いていなかったり、逆に実施した結果まで書いてしまったりする学生がいます。気をつけましょう。
2. 論理構成を接続詞に頼らない、接続詞がなくても意味の通る文章にする
前の文章が次の文章の理由になっていないのに「そのため、・・・」と書いたり、逆接になっていないのに「しかし、・・・」と書いたりして、それっぽい文章にしようとする学生がいます。接続詞は、論理構成を (無理矢理) 作るものではありません。論理展開を明確にすることで、接続詞を使わずに文章を書きましょう。
3. 手法は現在形で、結果は過去形で書く
研究室から出る論文として、機械学習関係多いです。そのような論文の構成としては、以下が一般的です。
- Introduction (緒言)
- Method (手法)
- Results and Discussion (結果と考察)
- Conclusions (結論)
「3. Results and Discussion (結果と考察)」における結果は、過去にやったことになりますので、過去形の文章で書きます。一方で、「2. Method (手法)」については、一つの事実であり、また提案手法においては、基本的に読者がその手法を、ぜひ論文に書かれているように使用してください、いうことですので、現在形で書きます。
ちなみに、内容的に「2. Method (手法)」に書くのか、「3. Results and Discussion (結果と考察)」に書くのか迷うときがありましたら、次のように考えてください。論文の読者で、同様のことを実施しようと考えている人が、書かれた通りそのまま実施したほうがよければ「2. Method (手法)」に、人によって内容を変更してよければ「3. Results and Discussion (結果と考察)」に書きます。例えば、回帰分析手法は必ずこれを使ってください、もしくは回帰分析手法の候補はこれとこれとこれで、その中からこの方法で最適化してください、ということであれば、「2. Method (手法)」に書きます。一方で、論文ではある回帰分析手法を用いましたが、実際は特に限定する必要はありませんよ、用いる回帰分析手法は読者が決めていいですよ、ということであれば、「3. Results and Discussion (結果と考察)」に書きます。
以上を踏まえて、論文の構成を考えましょう。
4. 結果が再現できる実験条件・シミュレーション条件をすべて記載する
学術論文において、再現性は非常に重要です。もちろん読者も、論文の結果を再現できる必要があります。結果を再現するための、手法の設定条件を、すべて記載する必要があります。例えば、ハイパーパラメータがある場合は、値の候補はどれかと、それらの候補の中からどのように最適化したかも書く必要があります。
読者が再現する立場になって論文を読み返し、再現するために不足している内容は追記しましょう。
5. 図・表について、図・表自体を見てキャプションを読めば、図・表の内容を理解できるようにする
例えば、散布図において、点の色が赤と青で2種類あるときは、青と赤がそれぞれ何を意味しているのか、 図・表自体もしくはキャプションに書く必要があります。本文中に書いてはダメで、読者に対して不親切です。
すべての図・表を確認してください。そして、図・表自体を見てキャプションを読めば、その図・表の内容を理解できるように、図・表およびそのキャプションを作成しましょう。
6. 表の罫線を入れすぎない
表の罫線として、縦線は基本的に入れません。横線も、必要最小限区別するところだけに入れます。例えば、表の縦に検討した手法を並べるとき、手法の間を区切る罫線は不要です。表の罫線を整理しましょう。
7. 図・表を示して終わりにしない
「図◯に・・・を示す。」とだけ書いて、その段落を終わりにするのはやめましょう。図・表を用いた説明がないのは読者にとって不親切ですし、図・表を使う意味、すなわち図・表によって分かりやすく説明すること、図・表を用いた議論や考察が全くないことになります。「図◯に・・・を示す。」と書いたら、段落を変えずに、その図・表を用いた説明をしたり、図・表を使った議論を展開させたりしましょう。
8. 最初から略語を使うことはしない
いきなり PLS と書かれても、読者は何を意味するかわかりませんし筆者の略語とは別の略語を想像するかもしれません。不親切です。最初は、partial least squares (PLS) のように、略さずに書きつつ略語を明示しましょう。ちなみに、日本語の要旨や論文でも、英語の書き方は英文法に従います。例えば、人名や文頭でない限りは、単語の最初を大文字にはしません。上の PLS も、Partial Least Squares (PLS) ではなく、partial least squares (PLS) です。
9. テンプレートに正確に合わせる
学会発表における要旨にも学会ごとに、学術論文にも論文誌ごとに、テンプレートがあります。タイトル、著者、著者の所属、図表やそのキャプション、参考文献など、すべての書き方がテンプレートに含まれています。順番や雰囲気だけ合わせればよいわけではありません。書き方を文字通り正確に、テンプレートに合わせましょう。例えば、タイトルの最初だけ大文字にするのか前置詞・冠詞以外の単語の最初はすべて大文字にするのか、所属は斜体にするのか、参考文献の人名はどのように略すのか、参考文献のタイトルを記載するのかなど、一字一句正確にテンプレートに合わせてください。
以上です。
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