機械学習で合成条件の役割を解き明かし、5種類の金属を均一に混ぜたナノ粒子を狙った大きさで作るための指針を示しました![京都大学・九州大学をはじめとする複数機関&金子研の共同研究論文]

京都大学・九州大学をはじめとする複数機関と金子研における共同研究の成果の論文が Communications Chemistry に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Machine-learning-based flow-synthesis of platinum-group-metal high-entropy alloy nanoparticles

 

です。これは共同研究として京都大学・九州大学をはじめとする複数機関の方々と一緒に研究した成果です。

本研究では、連続的に原料を流して反応させるフロー合成と、判断の根拠を解釈できる機械学習を組み合わせ、5種類の白金族金属を均一に混ぜた高エントロピー合金ナノ粒子を、粒子径を制御して作るための定量的な指針を示しました。この材料は高性能触媒として期待されていますが、構成元素ごとに還元されやすさなどが異なるため、元素の混ざり方と粒子の大きさを同時に制御することが難しいという課題があります。本研究は、複雑な合成条件と生成物の関係を、実験者が理解して活用できるモデルとして整理した点に特徴があります。

対象は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金を等しい原子割合で含むことを目標とした合金です。水酸化ナトリウム濃度、還元液と金属原料液の流量、還元液の温度、圧力という5つの条件を変えて51試料を合成し、電子顕微鏡、蛍光X線分析、粉末X線回折で評価しました。解析では、まず凝集しない条件を見つけ、次に均一な合金が得られる条件を選び、その条件下で粒子径を予測するという段階的な枠組みを採用しています。

凝集の判定には、条件に応じて結果を分岐させる決定木を用いました。水酸化ナトリウム濃度だけでは十分に区別できなかった凝集の有無が、濃度に還元液流量を掛け、金属原料液流量で割った指標を用いると、本データの二重交差検証で100%の正解率で分類できました。この指標は、還元を促す水酸化ナトリウムと、粒子を保護する高分子の供給バランスに対応します。複数の操作条件を化学的に意味のある指標へまとめることで、凝集を避ける条件を理解しやすくしています。

均一な合金形成の評価では、試料全体の元素組成と、結晶格子の大きさという相補的な情報を組み合わせました。組成だけ、あるいは格子の大きさだけでは見逃しうる不均一性を考慮できる点が重要です。両方の基準を満たす代表試料では、電子顕微鏡による元素分布の観察でも均一な分布が確認されました。決定木では、いずれの評価でも温度が主要因となり、約194℃が主要な分岐点として抽出されました。これは、5元素を十分に還元して合金化するために、適切な温度の確保が重要であることを示しています。二重交差検証での分類正解率は、組成の判定で79%、格子の大きさの判定で88%でした。

さらに、凝集せず均一な合金と判定された25試料を用い、部分的最小二乗回帰で平均粒子径を予測しました。モデルの調整と評価を分離する二重交差検証で、決定係数0.73、平均絶対誤差0.21nmを得ています。各条件の寄与を調べると、温度の上昇は粒子径を大きくし、水酸化ナトリウム濃度や還元液流量の増加は粒子径を小さくする傾向が示されました。また、各条件の値を入れ替えて予測精度の低下を調べる重要度評価でも、寄与の傾向を確認しています。これらは、粒子核の衝突、還元の進行、原料の希釈や反応時間の短縮と関連付けて解釈されています。均一な合金を作るための温度条件を確保しつつ、他の条件で粒子径を調整するという実用的な考え方につながります。

加えて、判定基準を満たす10万通りの条件で粒子径を仮想的に予測し、その中から無作為に選んだ条件で追加合成した結果、実測値と予測値の良好な一致を確認しました。本研究の意義は、合成の成功・失敗や粒子径を実験条件と結び付け、経験的な知識を再利用可能な定量的指針へ変換したことです。他の合金への展開には材料ごとの評価基準の確認が必要ですが、複雑な多元素材料を再現よく合成し、目的の粒子径へ調整するための基盤を示しています。

 

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。

 

以上です。

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