昨年度の金子研の四年生が主に研究していたテーマの成果が、Journal of Computer Chemistry, Japan にて論文公開になりました。タイトルは
高屈折率および高ガラス転移温度をもつ高分子材料のモノマー設計
です。下の URL から無料でご覧になれますので、もし興味がございましたらよろしくお願いいたします。
高屈折率および高ガラス転移温度をもつ高分子材料のモノマー設計
J-STAGE
この研究は、ポリマーとモノマーのデータセットがあったときに、データセット内のポリマーの物性値をこえうるモノマー構造とその重合条件を設計してくれる手法があったら、きっと喜ぶ人いるよねー、といったところからスタートしたものです。
実際、どこかの企業との共同研究というわけではなく、PolyInfo という高分子データベース (登録すれば無料でデータを見ることが可能) にあるデータを使って、手法の開発を進めました。今回対象としたのはホモポリマーのみです。手法の基本的な流れは、以下のとおりです。
- データベースにある対象の物性が測定されたポリマーを選択
- ポリマーのモノマー構造を数値化 (記述子の計算)
- 物性とモノマー構造の間で、ポリマー物性を推定するモデルの構築
- モデルの適用範囲を設定
- 仮想的なモノマー構造を生成
- 生成されたモノマー構造で、モデルの適用範囲内の構造の物性値を推定
- 推定値が良好なモノマー構造を選択
対象の物性が複数のときは、物性ごとに上の流れで解析します。論文では特に、モデルの構築のところで工夫をしていまして、以下の検討を行い、ベストなモデルを選択するようにしています。
- 自由結合手のあるモノマー構造を、どのように前処理すればよいか?
- モデル構築に用いる記述子はどれにすればよいか?
- モデル構築手法はどれにすればよいか?
このような、たくさんの選択肢の中から、ダブルクロスバリデーションの結果がよかったものに決定し、最終的なモデルを構築します。こうすることで、より推定性能の高いポリマー物性推定モデルを構築する検討ができるわけです。
今回の研究では、具体的な材料があったわけではありませんが、企業や大学などで具体的な材料をおもちの方が活用していただければ面白いだろうなー、と考えております。興味がございましたら、お読みいただければと思います。
高屈折率および高ガラス転移温度をもつ高分子材料のモノマー設計
J-STAGE
以上です。
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