生物学的知識と機械学習を組み合わせ、わずか6種類のmicroRNAでCAR-T細胞の「疲弊」を高精度に見分ける手法を開発しました![東京大学太田研&金子研の共同研究論文]

東京大学太田研と金子研における共同研究の成果の論文が Biochemical and Biophysical Research Communications に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Comprehensive microRNA profiling coupled with function-based feature selection reveals a biomarker panel for predicting CAR-T cell exhaustion

 

です。これは共同研究として東京大学太田研の方々と一緒に研究した成果です。

本研究では、がん免疫療法に用いるCAR-T細胞の「疲弊」を、わずか6種類のmicroRNA(miRNA)の測定と機械学習で高精度に見分ける手法を開発しました。

CAR-T細胞は、がん細胞への攻撃を繰り返すと増殖力や持続性が低下し、治療効果が十分に続かなくなることがあります。この疲弊状態を的確に評価するため、遺伝子の働きを調節する短いRNAであるmiRNAに着目し、網羅的な探索、実験的な確認、生物学的機能に基づく特徴量選択を一体化しました。

まず、ヒト由来のCAR-T細胞にがん細胞の抗原を繰り返し与えて疲弊状態を再現し、マウス実験でも増殖力と抗腫瘍効果の低下を確認しました。そのうえで、これまで十分に分かっていなかった疲弊に伴うmiRNAの変化を網羅的に解析し、対照細胞との発現量の違いから39種類を抽出しました。さらに逆転写定量PCRで発現差を確認し、候補を18種類に絞りました。これらの候補の標的遺伝子には、細胞周期など増殖に関わる経路との関連が認められ、疲弊した細胞の特徴を反映していることが示唆されました。

提案手法の特徴は、こうした生物学的な経路の情報を使い、同じ経路に対応するmiRNAの重複を減らす点です。主要な経路ごとに発現差の統計的有意性が最も高いmiRNAを代表として選び、機能の情報が乏しい4種類も残すことで、6種類の組み合わせを構成しました。対照群11検体、疲弊群6検体の測定値からロジスティック回帰モデルを構築し、ダブルクロスバリデーションで評価したところ、識別性能の指標であるAUCは、39種類で0.903、18種類で0.917、6種類で0.958となりました。AUCは1に近いほど識別性能が高いことを示します。測定項目を約85%削減しながら、より高い識別性能を得られた点が大きな成果です。さらに、同じデータを学習用12検体と評価用5検体に分けた検証でも、AUCは0.833でした。この結果は、生物学的知識を組み込むことで、少数の測定項目による細胞状態の評価を実現できる可能性を示しています。網羅的な分子データから実用的な指標を選ぶ枠組みとして、バイオマーカー開発への展開も期待できます。

現段階では少数の培養細胞試料での検証であり、患者由来試料などでの追加検証が必要ですが、将来のCAR-T細胞の品質管理や製造条件の最適化、治療効果の予測に役立つことが期待されます。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。

 

以上です。

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