機械学習が提案した4条件すべてで光触媒の酸素発生活性が初期最高値を上回ることを確認しました!![岩瀬研&金子研の共同研究論文]

岩瀬研と金子研における共同研究の成果の論文が Industrial & Engineering Chemistry Research に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Data-Guided Exploration of BiVO4 Synthesis Conditions for Enhanced Photocatalytic Oxygen Evolution

 

です。これは共同研究として明治大学の岩瀬先生の研究室の方々と一緒に研究した成果であり、修士卒の高見優太さんが取り組んだ研究の成果です。

本研究では、機械学習による条件提案と実験を繰り返すことで、可視光に応答して酸素を発生させるバナジン酸ビスマス(BiVO4)光触媒の有望な合成条件を見いだしました。

太陽光を利用する水分解では、酸素発生反応の効率向上が重要です。一方、同じ組成の光触媒でも、原料濃度や溶液組成、撹拌時間などによって性能が変わるため、複数の条件を同時に検討する必要があります。そこで、ガウス過程回帰で合成条件と酸素発生活性の関係を学習し、既存のベイズ最適化によって次に試す条件を選ぶ探索の仕組みを構築しました。

活性の予測値に加えて予測の不確かさも考慮し、遺伝的アルゴリズムで候補条件を探索します。提案条件で合成・評価した結果をモデルに追加することで、高活性が期待される領域と、情報が不足している領域の探索を両立させています。

検証では、文献データを出発点とする探索と、評価条件を統一した実験データを出発点とする探索を行いました。前者では、触媒濃度で規格化した活性指標として最高101.2 μmol h−1 g−1 Lを得ました。一方で、光源や反応装置が文献間で異なるため、定量的な予測には限界があることも示されました。

特に重要な成果は、9試料の実験データから原料濃度、硝酸濃度、溶液量、撹拌時間の4変数を探索した結果です。2回の探索サイクルで提案した4条件すべてで、酸素発生速度の実測値が初期最高値の40.5 μmol h−1 を上回りました。最高値は52.0 μmol h−1 で、初期最高値に対して約28%高い値です。

X線回折では、文献データからの探索で最高活性を示した試料には単斜晶と正方晶が共存し、実験データからの探索で最高活性を示した試料は主に単斜晶でした。また、両試料の合成条件には、ビスマスとバナジウムの原料濃度がともに約0.19 M、硝酸濃度が0.51~0.57 M、溶液量が約51 mL、室温での長時間撹拌という共通点も見られました。

各条件の測定は1回であり、統計的有意性や他の探索法に対する優位性、高活性化の機構は今後の検証課題です。少数のデータを具体的な実験提案につなげ、初期最高値を超える試料を実際に得たことは、データに基づく光触媒開発の可能性を示す成果です。今後、結晶構造や粒子形態、表面状態などの情報を組み込むことで、予測精度と物理化学的な理解をさらに高められると期待されます。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上です。

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