複数バッチの時系列データを統合した機械学習モデルによってPVAの製品粘度を高精度に予測し、規格外の予測が出た場合でも最終バッチの最適条件を自動設計して目標品質内に制御できるソフトセンサーを開発しました!![三菱ケミカル&金子研の共同研究論文]

三菱ケミカルと金子研における共同研究の成果の論文が Analytical Sciences に掲載されましたので、ご紹介します。タイトルは

 

Machine learning-based prediction of polyvinyl alcohol product viscosity and design of optimal process conditions

 

です。これは共同研究として三菱ケミカルの方々と一緒に研究した成果であり、博士前期課程の野村亮太さんが取り組んだ研究の成果です。

ポリビニルアルコール(PVA)の製造プロセスにおいて、製品の品質指標となる重合度と相関する粘度を所定の範囲内に保つことは極めて重要ですが、複数のプロセスを経るため重合完了から粘度測定までにタイムラグが生じるという課題がありました。本論文では、この課題を解決するために、重合終了直後にPVAの製品粘度をリアルタイムで高精度に予測するソフトセンサーを構築し、さらに目標粘度を達成するための最適なプロセス条件を自動設計する手法を提案しています。

提案手法の最大のインパクトは、単一ロットを構成する複数バッチのデータを統合(平均、最大、最小、中央値などを算出)し、時系列データから抽出した特徴量(特に正の変化量の合計や平均など)や、各変数の二乗項・交差項を組み込むことで、粘度予測の精度を飛躍的に向上させた点にあります。欠損値の処理やBorutaアルゴリズムによる特徴量選択を経たうえで、XGBoostを用いた予測モデルは極めて高い予測精度を達成し、重合から測定までのタイムロスを実質的に排除することに成功しました。

さらに画期的なのは、予測モデルの逆解析を用いたプロセス条件の設計です。重合前の初期条件や制御可能変数(新規VAM供給比率や触媒仕込量など)のみを用いた予測モデルを別途構築し、粘度が目標範囲から外れると予測された規格外ロットに対して、最終バッチの運転条件を最適に調整する仮想シミュレーションを実施しました。その結果、最終バッチの調整のみで製品ロット全体の粘度を目標範囲内に確実に引き戻せることを実証しました。

これにより、事後的な検査結果に依存していた従来のプラント運用から、バッチごとの予測に基づき能動的に製品品質をコントロールする運用へとプロセス全体を革新できる可能性が示されました。この成果は、測定待機による時間やコストの削減をもたらすだけでなく、実際の化学プラントにおける規格外製品の削減と長期的な安定稼働に直結するため、非常に実用的で産業上のインパクトが極めて大きい技術開発だと言えます。

興味のある方は、ぜひ論文をご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上です。

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